全国一の空き家都市・大阪で、下町ロケット的「町工場の街」が、空き家率22.4%に挑む。

全国一の空き家都市・大阪で、下町ロケット的「町工場の街」が、空き家率22.4%に挑む。

現在、全国で820万戸にのぼる空き家は、国・自治体をあげて取り組むべき課題となっています。全国の政令指定都市のなかで最も空き家を多く抱えているのが、大阪市。その大阪市のなかでも空き家率の高い区の1つが、「生野区」です。今回はその大阪市生野区がどのような空き家対策をしているのか、生野区役所の地域まちづくり課長・乾さんにお伺いしました。

長屋の町工場 ●インタビュアー
オウチーノ 執行役員 清水菜保子
女性活躍推進担当やってます。古民家好き。古い木造長屋や長屋町工場のお話、心が躍りました。

戦火を免れた古い木造空き家が多い、生野区。

―生野区の空き家の現状を教えてください。

大阪市のなかでも、生野区は特に空き家の多い区です。現在の空き家率は22.4%で24区中第3位です。さらに、その空き家のなかには、長屋や古い木造の家が多いのが特徴です。生野区は戦火による家屋被害が少なかったため、古い家がそのまま空き家になっています。長屋の比率は大阪市内のなかで最も高く、5件に1件が長屋です。

―なぜ、生野区は空き家が多いのでしょう?

正式な分析ではないですが、環境条件的に見えてくるものがあります。生野区では、しっかり管理されていない空き家が多いのですが、そういった家は傾向として相続としたものが多いです。つまり、親御さんが亡くなられたなどで相続した古い家が、活用されていないんですね。
総務省が出している空き家の調査では、空き家を「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「その他の住宅」などと分類しています。先ほどお話しした空き家率22.4%のうち、「その他の住宅」が8.7%を占めています。そして大阪市全体の空き家率が17.2%で、うち「その他の住宅」は4.5%です。大阪市全体と生野区との空き家率の差が5.2%。「その他の住宅」の差が4.2%ですので、市全体との差はほとんど「その他の住宅」と見ることもできます。
つまり生野区では、貸し出そうとも売ろうともしていない空き家が多い、というのが統計的な事実として分かります。なぜそうなったかというと、戦火を免れた古い木造なので、貸し出すのが難しいんですね。権利者が違う場合もありますし。また改築するにも、長屋が多いので一部だけ手を入れることは難しい。その結果、空き家を活用しようという意識が薄い可能性があります。

―なるほど…。改築にはお金がかかりますし、長屋だとその改築も簡単にできない。また、頑張って改築したとしても、かなり築年数が経っているので買い手や借り手がつかないだろう、と思う人がほとんどでしょうね。空き家が多いことによって、生野区にどのような問題が生じていますか?

まず空き家が多いと街の活力が落ちていきますし、老朽化した空き家は保安上危険です。悪い人が勝手に入って拠点となったり、放火の対象にもなりえます。治安、活力両面の観点から問題意識を抱いています。

空き家の弱点をアピールポイントに。

―生野区は空き家問題に対してどのような取り組みをされていますか?

空き家対策については、大阪市が全体の方針を出しています。所有者自身が空き家を管理することに加え、地域の皆さんでまちづくりとして活用する、という流れを作ろうとしています。その1つの流れで、24区が一緒になって市民への相談窓口を作る予定です。色んな情報提供や利活用に関する相談など、専門機関と連携して市民ニーズに応えられる相談窓口を目指します。もう1つは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたので、老朽空き家が放置されたままにならないよう、動いていきます。
生野区としても、空き家の魅力を高めることと、まちづくりの観点で、家主(空き家の持ち主)と地域の人が力を合わせて新たな居住者を募っていくのがいいんじゃないかと考えています。区役所の地域まちづくり課が拠点となって「地域活性化」という観点から生野区オリジナルの取り組みをやっていこうと考えています。その1つが、昨年から今年にかけて実施した「生野区空き家リノベーションアイデアコンクール」です。

―どのような経緯で「生野区空き家リノベーションアイデアコンクール」を開催することになったのですか?

まず私たちは1つの仮説を立てました。空き家にマイナスイメージを持ちがちだが、もしかしたら、「戦火を免れた古い長屋」は見せ方によっては魅力的にうつるのではないか。空き家を活用して街の魅力をアップさせられないだろうか、と。そこからコンクールの企画がスタートしました。

―まずは「空き家」に対する自分たちの見方を変えられたわけですね。

はい、「古くなって借り手がない」というだけでは、話は展開していきません。逆にその弱点をアピールポイントにする、ということの可能性を追求しました。また、空き家だけで見せるのではなく、生野区の街とセットでデザインしてもらおうと考えました。

ものづくりの街・生野区が誇る、町工場。

―生野区はどんな街なのですか?

生野区は下町で、隣近所のつながりが残っています。コンパクトにまとまっていて暮らしやすいのが魅力です。また、あまり知られていないのですが、ものづくりの街なんです。小さい町工場がたくさんあって、職住近接。しかも、長屋でやっていたりする。

長屋の町工場

そんな会社が、全国的に大きなシェアを持っていたり、オンリーワンの技術を持っていたり、日本に数件しかない高い技術力を持っていたりするんです。面白いでしょ。

―長屋で工場ですか…!面白いですね!

でもPRもされていなくて、住民も意外と知らないんですね。なので今、区役所でそういったものづくり企業を紹介するイラストのパンフレット「ものづくり百景」を作っています。

ものづくり百景

ものづくり百景

こういったものづくりを、はじめから空き家とつなげるつもりではなかったのですが、空き家を地域活性の拠点にしたいと思ったときに、元々作ってた「ものづくり百景」と地域の活性化をワンセットにして、何かできないかと思いつきました。

―なるほど、そういった生野区の街の魅力と、空き家を合わせて発信しようと考えられたんですね。

そうなんです。こういったことを念頭に置いて、「下町風情が残る絆の強い街『生野区』らしい空き家活用」をテーマに、コンクールを開催しました。

地域住民が主体となって、空き家活用に取り組む街へ。

―コンクールの反響はいかがでしたか?

41件の応募がありました。大阪府内から18組、府外23組でした。今申し上げたように前提条件をある程度絞って良いアイディアを募集していましたので、審査員である服部滋樹さん(graf 代表)、家成俊勝さん(dot architects 代表)、塩山 諒さん(NPO法人スマイルスタイル代表)の3名には、そのコンセプトに沿って審査してもらいました。最優秀賞を受賞されたのは一般社団法人だったのですが、優秀賞と特別賞がどちらも大学生という意外な結果となりました。
最後にシンポジウムを2月6日に開催しましたが、80名程が来場されました。シンポジウムでは住民に向けて、生野区は全体的に空き家を貸し出したいという意向がそこまで高くないこと、地域活性化という視点が普及していないこと、長屋の価値を見出すことでアピールしていけるかもしれないことを、発信しました。

シンポジウム

そして、このシンポジウムの結果を2度3度と発信していくというのを以後1年間やっていきます。その1回目として、3月13日にフォローアップ企画をやりました。これを「エピソード1」と呼んでいるのですが、今度は私たちではなく、生野区にお住まいの建築家さんで、家主さんでもある方が主催されました。

エピソード1

―区役所の動きが、地域の方へ派生していったんですね!

住民や家主さん、建築家さんたちが30名程集まり、アイディアを元にして今後の生野区の地域活性化、空き家活用を話し合いました。コンクールで集まったアイディアをみんなで見ながら、「街の活性化とは」「空き家の魅力とは」を話し合いました。とある家主さんからは「築80年以上の長屋を借りてくれる人がいるのか」という声が挙がりましたが、一方で「それは弱みでなく、強み。ちゃんと魅力を発信すれば借り手はある。今、実際に貸し出している」とおっしゃる家主さんもいました。私たちも初めて聞く話が出てきたり、非常に有意義な場でした。

エピソード1

―最後に、これからの展望を教えてください。

これからエピソード2、3と場所を変えて、住民主導で続いていくことを期待しています。役所が「こうですよ」とお仕着せがましく言ってもいけないので、私たちはあくまで現状を説明するだけ。あとは地域住民が「ホンマにそやなぁ」と思って自分たちで動いていく流れができるよう、支援をしていきます。「空き家と住み手を何件マッチングしたか」ではなく、住民の空き家に対する姿勢、取り組み方がどれだけ変わったか、というところを大事にしていきたいです。
このイベント自体ささやかなものなので、どんどん空き家が埋まるかといえばそうではないと思いますし、ただ住み手がつけばいいわけではありません。「職住近接」「ものづくり」「地域の関わり」というところに魅力を感じる若い住民を招き入れ、街が活性化していったらと思っています。

―ものづくりの街・生野区らしい空き家活用に、今後も注目していきたいと思います。ありがとうございました!

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