弁護士に聞く、離婚時の住まいまわり

弁護士に聞く、離婚時の住まいまわり

人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂……「まさか」。
順風満帆かと思われていた結婚生活にも、「まさか」が起こりえます。
いまや、日本の離婚率は約1/3と言われ、“離婚”は珍しい出来事ではなくなっています。

では、離婚が決まったとき、住んでいる家はどうすればいいのでしょうか。
今回は、離婚問題に詳しい『みらい総合法律事務所』のパートナー弁護士・辻角智之さんに、離婚時の住まいまわりに関する実務上の対応について伺いました。

【お話を伺ったのは…】

辻角 智之 弁護士
みらい総合法律事務所所属。平成23年 にパートナー弁護士就任。共著に「不動産賃貸トラブルQ&A」(日本法令) ・「応用自在! 契約書作成のテクニック」(日本法令)・「契約審査のベストプラクティス ビジネス・リスクに備える契約類型別の勘所」(レクシスネクシス・ジャパン)・「応用自在!覚書・合意書作成のテクニック」(日本法令)など。

住んでいる家は財産分与の対象になる?

住んでいる家は財産分与の対象になる?

辻角弁護士:離婚する際に夫婦間で争われる問題のひとつに“財産分与”があります。
財産分与は「婚姻生活中に夫婦が協力して築き上げた財産(共有財産)を、離婚の際に分配すること」を言い、民法で定められたルールです(民法768条1項)。

ただ、財産分与の対象となる財産は、「婚姻生活中に夫婦が協力して築き上げた財産」となるので、婚姻前から所有していた財産は財産分与の対象とはなりません。これを特有財産と言います。

――では、離婚までの間に住んでいる家については、実務上どのような取り扱いになるのでしょうか?

結婚後に購入した住まいなら、婚姻生活中に夫婦が協力して築き上げた財産そのものなので、財産分与の対象となりますが、婚姻前から夫婦の一方が所有していた住まいは、財産分与の対象とはならず特有財産になります。

もっとも、婚姻前から所有していてもローンが残っていた場合には、ローンの支払いは夫婦で協力して支払ったと捉えることができるので、その支払い分に応じた財産分与はなされることになります。

――結婚前にローン残債がなかった物件は、所有している人がそのまま持ち続けることができる、というルールになっているのですね。

住まいのローンが残っている場合は?

住まいのローンが残っている場合は?

――では、住まいにローンが残っていた場合は、どのような取り扱いになるのが一般的なのでしょうか?

離婚における財産分与で特にやっかいなのが、「住宅ローンが残っている場合の不動産の処理」です。
財産分与において当該不動産の価値を算出するにあたっては、当該不動産の時価からローンの残額を控除した金額が、財産分与における当該不動産の価値となります。

そのため、簡便な方法は、「当該不動産を売却し、住宅ローンを完済した後の財産を夫婦で分ける」という方法です。

――離婚と同時に住まいを売却する人も少なくないのは、このような背景もあるのかもしれません。
では、離婚前の家にそのまま住み続けたい場合にはどうなるのでしょうか?

離婚後に離婚前の住まいに継続して暮らしたい場合は……?

離婚後に離婚前の住まいに継続して暮らしたい場合は……?

夫婦の一方が離婚後も引き続き住み続けたいというパターンは、取り扱いに注意が必要です。
仮に、不動産名義及び住宅ローン名義がいずれも夫となっていて、夫が引き続き住み続けたい場合、算出した不動産価値の半額を妻に払い、そのまま住宅ローンを支払えば足ります。

――名義を変えず、ローンもその場で精算できる場合には、そこまで複雑な話にはならないようですね。
反対に、妻が住み続けたい場合にはどうなるのでしょうか?

夫名義の物件に妻が引き続き住み続けたいという場合には、まず「不動産価値の半額を夫に支払い、不動産名義を妻に変えて、住宅ローンも妻が支払い続ける」というやり方が考えられます。

もっとも、不動産の価値は高額になることが多く、不動産価値の半額を支払うことが困難であったり、住宅ローンは金融機関も絡むため、夫名義から妻名義にローンを変更することが困難なこともあります。

そのため、住宅ローンと不動産の名義は夫にしたまま妻が住み続け、その分の賃料を夫に支払うという方法も稀にあります。

いずれにせよ、住宅ローンが残っている場合の財産分与は、住宅ローンがいくら残っているのか、金融機関の対応はどのようなものか、などが重要となってきますので、慎重に検討する必要があります。

――ローンが残っていて、かつ離婚前の自宅にどちらかが「住み続けたい」という意思があるケースは、特に取り扱いが複雑になるようですね。

離婚と住まいは切っても切れない間柄にあるだけに、「まさか」の事態では争いが長期化することもあるテーマです。
実務上の取り扱いは、知識として覚えておくと良いでしょう。

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