年代別のマンショントレンド ― 設備、仕様の変化をプロが解説

年代別のマンショントレンド ― 設備、仕様の変化をプロが解説

はじめに

中古マンションを探す際に、考慮に入れるのが「築年数」。築年数は新しいほうがいいのでは ?と思う方もいるかもしれませんが、単純に建物の古さだけで比べられるものではなく、建てられた年代ごとに、設備、仕様に特徴があり、それぞれの魅力があります。

今回は、マンション管理の相談・顧問業務に携わり、1000棟以上の物件を見てきたマンションのプロであり、2019年1月に『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)を上梓した日下部理絵さんに、年代別の中古マンションの特徴、購入時の注意点について解説いただきます。

中古マンションとひとくくりに言っても、未入居物件もあれば一度入居はしているものの築浅物件、築10年や20年、30年、40年、さらに築50年以上の築古マンションまで様々な築年数の中古マンションが存在しています。

チェックポイントはどこか?

このように売買市場には様々な築年数の中古マンションが存在していますが、「中古マンションを購入しよう!」と思ったときにいったい何をチェックして検討したらいいのでしょうか。

そもそもマンションには、その当時の法令、設備や仕様、デザイン、間取りなど時代ごとにマンショントレンドが表れています。各年代の中古マンションの傾向を、年代を追って見ていきますので、購入したいと思った物件を検討する際の参考にしてください。

1970 年代以前の中古マンションの特徴

そもそも分譲マンションは、1960年代後半~70年代に旧住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)で融資制度が利用できるようになったことを受けて、本格的に普及が進みました。

当時の旧公団や公社が建てた郊外型の団地などは、5階建てでエレベーターがなく、間取りは40~50㎡台の3LDKタイプ、洋室よりも和室が重要視されていました。
1970年代以前のマンションで、現存する中古マンションに見られる最も多い特徴としては、和室から洋室へのリノベーションがあげられます。

多摩ニュータウン永山団地

この年代の中古マンションは、中央にリビング、南側に洋室2つの「センターリビング」という間取りが多く、一つ一つの部屋が小さいという特徴があります。中央にLDKがあるので「中LDKプラン」とも呼ばれていました。この間取りは、リビングの採光やキッチンの独立性が重視される現在とは異なり、食事をするダイニングと料理を作るキッチンの部屋として区分がされています。

センターリビング型とは

 一つひとつの部屋が小さいことが多い
 『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』p.88より

また、天井の高さは220~230㎝が主流です。天井の高さは家具などの設置だけでなく、部屋の開放感にも大きく影響します。
まずはセンターリビングという間取りでいいかどうかを確認しましょう。もし間取りを変更するなど大掛かりなリフォームを検討している場合は、マンションの管理規約などでルールを確認しましょう。一般的にはリフォーム前に手続きが必要になることが大半です。

「今後、何年住む予定なのか」「何年住めるマンションなのか」

その際に、リフォームできる項目や範囲も必ず確認しておきましょう。特に、洋室を絨毯からフローリングに変更したい場合、使用できるフローリングに遮音等級などの決まりがあるかをチェックする必要があります。
また、この年代の排水管は埋め込み式が多いため、床の段差を解消できない可能性があります。「バリアフリーにしようと思ったのにできなかった」というようなことがないように、確認が必要です。

何より一番大切なのは、「今後、何年住む予定なのか」「何年住めるマンションなのか」ということです。
たとえば、10年住む予定で購入を決断したのに、住み始めてからしばらく経って建替えのため住めなくなったのでは本末転倒です。

やはり、中古マンションの最大の魅力は価格です。この年代のマンションであれば、都心部でも立地の割に安く購入することができます。今後、住みたい年数があい、自分好みのリフォームができるのであれば、この年代のマンションも候補の一つとなるでしょう。

新宿区の団地群

1980年代の中古マンションの特徴

1981年の建築基準法の改正によって「新耐震基準」が導入され、構造的によりしっかりとした建物が建築されるようになりました。
まずこの年代のマンション購入をする場合は、「新耐震基準」「旧耐震基準」なのかを確認することが重要です。新耐震基準かどうかは、建物が完成した竣工年ではなく、「建築確認済証(確認通知書/副本)」の交付日が1981年6月1日以降かどうかで判断できます。

建物を建てる前には、市区町村に建築確認申請を行い「建築基準法などの法律に違反していないか」のチェックを受けます。基準を満たすと建築確認済証が交付されるという手順となっています。マンションは、完成まで一定期間がかかるため、1982年に完成したマンションであっても、交付日が1981年5月31日以前の可能性もあります。不動産会社や行政機関(建築確認台帳記載事項証明書)で必ず確認をしましょう。

また今まで、マンションの部屋数が重要視されていましたが、住むという視点から、生活動線などに配慮した間取りが出てきたのもこの頃です。
たとえば、玄関を住戸の真ん中に配置(センターイン)することによって、南と北の両方のバルコニーが実現するセンターイン型があります。この間取りは、北側の洋室が外廊下に面していないため、プライバシーも守ることができます。寝室などのプライベートエリアとリビングのパブリックエリアが機能的にわかれ、今でもとても人気の間取りです。

センターイン型とは

 玄関が住戸の真ん中に配置されている
 『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』p.91より

この年代は、民間で大規模再開発が増加し、今でも大人気のヴィンテージマンションが建築された年代でもあります。たとえば、ヴィンテージマンションの代表ともいえる「広尾ガーデンヒルズ」も1982年築です。この頃から、マンションは一戸建てを購入するための仮住まいではなく、永住意識が出できました。
また、1986年12月からは急激な地価高騰を伴うバブル経済に突入したことを受け、億ションや10億円を超えるスーパー億ションも登場した時代です。

この年代の「投資・投機マンション」には注意が必要

いっぽうでバブル経済を背景として、投資や投機用のマンションも多く誕生しました。 この投資や投機用マンションとは、住むためではなく価格が上昇したらいずれ売る(転売目的の購入)が主であったため、壁や床が薄いなど極力無駄を省いた設計がなされています。そのため、音が響きやすい、管理員がいない、修繕積立金が月額1000円など管理費等の設定が極端に低いなどの問題があるマンションが多く見受けられるため、注意が必要です。

現代は、「確実に家賃を得る」という視点に変わっているため、たとえ賃貸・投資マンションであっても、立地や仕様など分譲マンションと差がないような物件も多く存在します。
この意識のまま「分譲マンションも、賃貸・投資マンションも変わらない」と思い、この年代のマンションを購入すると、間違った選択をしてしまうのです。

一般的にこの年代の投資や投機用マンションは、ワンルームマンションなど比較的狭いものが多いですが、なかにはファミリータイプの投資マンションも存在します。

1980年代の中古マンションを購入する場合は、そのマンションの建築の背景は投資や投機なのか、ヴィンテージなのか、などを見極めることが重要です。

ヴィンテージマンション「広尾ガーデンヒルズ」の並木道

1990年代の中古マンションの特徴

1990年代は、前半と後半でマンショントレンドが変わります。1991年にバブルが崩壊すると景気低迷によりマンションの価格も下がりはじめます。プランも標準仕様、部屋の広さも小さいものが増えていきます。

まず1990年代前半は、生活に便利なプラス機能や住宅設備機器の改善がされた時期です。たとえば、ユニットバスの追い焚き機能が付いたり、朝シャンブームから洗面台にシャンプードレッサーが付いたりしました。今や標準ともいえるウォシュレットが登場したのもこの頃です。
また、二重床や二重天井、バリアフリー仕様も増えていきます。国際的な流れを受け、日本でも1994年バリアフリーに関する「ハートビル法」が制定され、不特定多数が出入りする病院やホテル、デパートのほか、住宅にも採用されていきました。

シャンプードレッサー

次に1990年代後半は、1995年の阪神・淡路大震災を契機に、構造や基本性能に対する関心が高まり、制振構造、免震構造などの新技術が発達していきます。また、床(屋根)スラブが約15㎝から18~20㎝と厚くなり、遮音性能がアップするなど、 住宅の基本性能が進化した時代といえます。スラブとは、鉄筋コンクリート造りの床や屋根のことです。

価格を抑えるため部屋の広さ(専有面積)を広げず、室内の有効面積を増やすため柱や梁を外に出す「アウトフレーム工法」を採用したのもこの頃です。これにより室内の有効面積が増えました。さらに、「逆梁ハイサッシ」で採光をより良くして開放感を増加させるなど、空間的な質が向上していきました。

アウトフレーム工法とは

『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』p.96より

アウトフレーム工法は、室内に柱の出っ張りがないため家具も配置しやすいです。逆梁ハイサッシは、通常、床スラブの下側(サッシの上部)に位置する梁をバルコニーの外側に出し、床スラブの上で吊る形になるため、サッシを高くすることができます。
1999年には「住宅品質確保促進法」が制定され、「住宅性能表示制度」もスタートしています。

また、東京都中央区の工場跡地である佃島に、のちにタワーマンションの代名詞ともいわれる8棟のタワーマンション「大川端リバーシティ21」が建築されたのもこの年代です。なかでも1999年竣工の「センチュリーパークタワー」は地上54階建て、1棟で756戸 というスケールで、ウォーターフロント再開発の先進事例ともいわれています。2000年以降に続く「大規模開発・超高層タワーマンション」ブームの先駆けとなりました。

東京都中央区佃島の「大川端リバーシティ21」

この背景には、1990年代に企業の不良債権処理が進んだことによって、都心部の寮・社宅や周辺部の工場跡地が放出されたことが影響しています。大型プロジェクトが進めやすくなったためです。

この年代の中古マンションを購入する場合は、まず1990年代前半の物件なのか、後半の物件なのかを確認します。そして次の項目を必ず確認しましょう。

・床スラブの厚さはどうか
・床仕上げは「直張り」か、「二重床」か
・天井は「直天井」か、「二重天井」か
・「アウトフレーム工法」など家具の配置はしやすいか
・制振や免震構造が採用されているか

次に、この年代のタワーマンション購入で気をつけたいのは、バブル期を彷彿させる見た目の豪華さに惑わされないことです。

見た目の豪華さだけで判断するのは危険

当時あこがれていた億ションに住めるなんてと夢見心地で焦って即決するのは危険です。
ある住民の方は、「エレベーターの設置台数が少なく、朝の混雑時にはエレベーターになかなか乗ることができない・・・」「魅力的な共用施設がない・・・にも関わらず管理費が高い」などの不満をうったえていました。

タワーマンションや大規模マンションの醍醐味ともいえる共用施設の内容は、時代とともに変わっています。それどころか管理費等の設定は、高経年の高級マンションほど高い傾向にあります。
そのため、購入検討時には、施設は陳腐化していないか、実質的な機能性はどうかなどの確認が必要です。
また、エレベーターの停止階が限られるなど、セキュリティ対策がなされているかも、押さえておくべきでしょう。

見た目だけでなく、設備の状態、使い勝手も確認を

2000年代の中古マンションの特徴

2000年代に入ると、床スラブの標準が18㎝~20㎝になり、また近年のマンションを選ぶ理由の一つである防犯面への充実が図られていきます。
さらに、2003年7月の建築基準法の改正によって換気設備の設置が義務付けられ、住宅全体のシックハウス対策として「計画的な換気」が必要となりました。これらの背景を受け、24時間換気や浴室乾燥機も普及するなど、基本性能が向上していきます。

また、1990年代後半からの流れを受けて本格的な「大規模開発・超高層タワーマンション」ブームが到来します。東京都港区、中央区、品川区、江東区の湾岸沿いであるベイエリアに多く供給されました。これらの大規模プロジェクトやタワーマンションでは、基本性能が向上していることを受け、通風や採光よりも眺望が求められる傾向がありました。
そのため、眺望を楽しむような一見いびつとも見える間取りのマンションも多く存在しています。

ベイエリアのタワーマンション群

いっぽうで購入者の好みやニーズの多様化に合わせたセレクトプランや、オーダーメイドの浸透、素材感を重視するなど、本物志向の色合いも強まっていきます。また、各部屋の設備よりも、開放感がある豪華なエントランス、フィットネスジムやゲストルーム、カフェ、なかには天然温泉やプール、エスカレーターまで兼ねそろえたマンションが登場するなど、共用施設の充実が評価されていた時代ともいえます。さらに、屋上庭園やガーデニングなど、環境共生の思想も生まれています。

また見逃せないのが、ソフト面の充実です。
コンシェルジュや専有部サービスなど、居住者と来訪者へのホスピタリティを追求するサービスが重要視され、ホテルライクな生活を提案する物件が増えた時代でもあります。この年代の中古マンションは、基本性能の向上によって安全・安心は担保されているので、「自分自身がどんなマンションライフを送りたいのか」「そのために必要な間取りや共用施設は何か」という視点を持つと選びやすくなります。

たとえば、「景観重視でつくられた間取りは住みにくくないか」「マンション内のフィットネスジムやプールは頻繁に使用するのかしないのか」などがあげられます。
プールや天然温泉、機械式駐車場は、維持費がかかる施設の代名詞ともいえます。頻繁に使用するならいいのですが、使用しない場合でも、管理費等のなかから維持費や将来の修繕費などを支払い続けることになります。
こういった共用施設やサービスを使用するのかどうか、良く検討してから購入しましょう。
特に、タワーマンションの購入を検討している方は、東京オリンピックバブルを受け、価格が高騰しているエリアもあります。新築時の販売価格や近隣の相場価格を必ず調べ、あまりに高い場合は、価格交渉しましょう。中古マンションは個々の住民が売主である場合が多いので、価格交渉に応じてくれる可能性があります。
また、この年代のタワーマンションの新築時の価格設定の特徴として、景観を楽しめる高層階は高い設定、低層階は低い設定になっていることが多いのも特徴です。

機械式駐車場はスペースを有効活用できる一方、維持費がかかる

2010年代の中古マンションの特徴

2010年代に入ると床スラブの厚さは20㎝以上が標準となり、マンションのデメリットの一つであった騒音トラブルも軽減されています。
ただし、一部タワーマンションでは、重さの関係から厚さが20㎝以上ない物件も存在します。
また、引き戸の見直しや照明ボタンが押しやすくなるなど、高齢者や障害のある方だけではなく、すべての方が使いやすいよう「バリアフリー」から「ユニバーサルデザイン」へと変化してきています。

さらに2011年に発生した東日本大震災の影響から、備蓄倉庫や簡易トイレ、浄水装置の設置など、「災害に強いマンション」を売りにしたものが多く登場しました。既存マンションでも、防災対策に取り組む管理組合が多く存在しています。

最新の新築マンションでは、電力自由化の後押しもあり、エコロジーに配慮した省エネマンションが増加しています。
たとえば、住宅性能表示制度の省エネ等級4であれば、暖房費が従来と比較して約35%も違うともいわれています。
また、結露を防ぐ効果が高いペアガラス(複層ガラス)が多く採用されています。ペアガラスとは、2枚のガラスを使用した窓のことです。一般的にこの2枚のガラスの厚さは3㎜で、ガラスとガラスの間に6㎜の空気層があり、ガラス+空気+ガラスで1つの窓を形成しています。このように2枚のガラスで空気層を作ることにより、高い断熱性能を発揮します。厚みがあるほうが断熱性能は高いといわれています。

さらに、エネルギーを無理なく賢く利用するツールとして、「スマートマンション」の導入がされている物件も出てきています。スマートマンションとは、マンション全体でエネルギー管理、節電およびピークカットやピークシフトを行い、エネルギーの効率的な使用や無理のない節電を実現するシステムを持つマンションのことをいいます。太陽光発電や蓄電地、高圧一括受電の導入とともに、非常時の電力使用だけではなく、電気料を抑制する効果もあります。 としまエコミューゼタウン。外壁を緑化パネルや太陽光パネルが覆う

管理組合の修繕積立金会計の残高を確認しよう

2010年代のマンションは、中古とはいえいわゆる、未入居である新古物件、築浅物件など新築と変わらない仕様の物件も多く存在しています。実際に現在、中古マンションの売買事例は、築10年以内の新しい物件が主流になっており、とても人気があります。
それは新築マンションの供給が減り、かつ市場価格が高騰している現在において、新築と遜色ない魅力を持つ中古マンションが注目を集めているためです。現代におけるリサイクルへの価値観の違いも影響しているかもしれません。

ただし、注意したいのは、修繕積立金会計の残高です。新築とは違い、一般的に中古の場合は「建物に対しての消費税」と「修繕積立基金」の支払いを免れています。
しかし、築10年前後の場合、入居してすぐに大規模修繕工事を実施するため、一時金を支払わなければならない可能性があります。築浅物件は、そういった意味でも新築とさほど価格が変わらない場合があります。これらの金額も含めて検討が必要です。さらに中古物件の購入には、不動産会社への仲介手数料(一般的に売買価格の3%+6万円)+消費税がかかることも、計算に入れておきましょう。

まとめ

年代別のマンショントレンドはいかがでしたか。
特に中古マンションを購入して室内のリフォームを検討している方は、マンションの築年数を参考にして購入物件を選択するというのも一つの方法です。ぜひ参考にしてください。

筆者

日下部

日下部 理絵 (Rie Kusakabe)
マンショントレンド評論家・マンション管理士

大学在学中の2001年に実施された第1回マンション管理士・管理業務主任者試験に合格。大学卒業後、マンション管理会社勤務を経て、マンションの総合コンサルタント事務所「オフィス・日下部」を設立。 主な著書等に、『マイホームは価値ある中古マンションを買いなさい!』(ダイヤモンド社)、『負動産マンションを富動産に変えるプロ技』(小学館)、『マンション管理と修繕 最強ガイド2019』(東洋経済新報社)、『マンション理事になったらまず読む本』(実業之日本社)、『マンションの設備・管理が一番わかる』(技術評論社)などがある。

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