田園住居地域はどこにある?用途地域の規制と建築可能な建物を解説!

田園住居地域はどこにある?用途地域の規制と建築可能な建物を解説!

2018年4月より、25年ぶりに13番目の用途地域として「田園住居地域」が加わりました。 田園住居地域はどのような規制で、どこにあり、指定状況はどのようになっているのでしょうか。

この記事では「田園住居地域」について解説します。

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1.田園住居地域とは

最初に田園住居地域の概要を解説します。

1-1.田園住居地域とは

田園住居地域とは、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定められた用途地域です。

用途地域とは主にエリアごとに建築可能な建物の用途を制限する規制であり、「市街化区域」および「非線引都市計画区域の一部」に定められます。

用途地域は「市街化調整区域」には原則として定められないため、市街化調整区域内に田園住居地域は基本的に指定されません。市街化調整区域とは農地を守るために市街化を抑制すべき区域のことです。

用途地域には、低層住宅に係る良好な住居の環境を保護する地域として、他に「第一種低層住居専用地域」と「第二種低層住居専用地域」があります。

田園住居地域も低層住宅に係る良好な住居の環境を保護する地域の一つであることから、規制内容も「第一種低層住居専用地域」や「第二種低層住居専用地域」に近い点が特徴です。

第一種低層住居専用地域とは低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域であり、第二種低層住居専用地域とは「主として」低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するための地域になります。

第二種低層住居専用地域の定義には「主として」という言葉が付いており、第一種低層住居専用地域よりも用途の規制がやや緩いのが特徴です。

さらに、田園住居地域は第二種低層住居専用地域よりも用途の規制がやや緩いという特色があります。

1-2.都市計画法と建築基準法の改正はいつから?

田園住居地域が開始された都市計画法と建築基準法の改正日は下表のとおりです。

法律 公布日 施行日
都市計画法 2017年5月12日 2018年4月1日
建築基準法 2017年5月12日 2018年4月1日

公布日とは国会で制定された法律が天皇によって公布された日で、施行日とは実際にその法律が施行する日になります。つまり、田園住居地域は2018年4月1日から始まった用途地域です。

1-3.田園住居地域ができた背景は生産緑地の2022年問題

田園住居地域が創設された背景には「生産緑地の2022年問題」があります。2022年問題とは、2022年に多くの生産緑地の指定が解除され、大量に土地が供給されることで土地価格が暴落するのではないかという懸念でした。

この記事を執筆している2022年9月時点においては、そのような問題は発生しておらず、2022年問題は生じなかったということになります。

生産緑地とは、市街化区域内における面積が500平米以上(条例で300平米以上とすることもできる)の農地のことです。

市街化区域とは、すでに市街地となっている区域またはおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域であり、比較的人口が密集している地域のことを指します。

つまり、生産緑地とは都市部の中にある農地のことです。例えば、東京都の練馬区や世田谷区にある農地が生産緑地に指定されています。

生産緑地に指定された農地は、都市部の土地でありながらも固定資産税の軽減措置があったり、相続税納税猶予を利用できたりするメリットがあります。

多くの生産緑地が1992年に指定されましたが、その指定期間が30年間であったため、2022年に指定が解除される予定でした。

指定が解除されれば、固定資産税が急激に高くなるため、その負担に耐え切れず、一気に土地が売りに出されるのではないかと思われていたのが2022年問題です。

ただし、2017年に生産緑地法が改正され、生産緑地を10年間延長できる特定生産緑地制度ができました。多くの生産緑地が10年間の延長を選択したことで、実質的に2022年は回避されたのです。

同時に、生産緑地の土地を活用しやすくするために新たに定められたのが「田園住居地域」です。

「生産緑地イコール田園住居地域」ではありませんが、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護すれば、都市の中に農地が共存しやすくなることから、生産緑地対策の一環として田園住居地域ができたのです。

2.東京都にもどこにも指定事例なし!国土交通省による指定状況とは

国土交通省の都市計画現況調査によると、2021年3月31日時点において、田園住居地域に指定されたエリアは「ゼロ」です。

つまり、2021年3月31日時点では、全国に田園住居地域は一つも存在しないということになります。

各都道府県の田園住居地域の面積

同じく国土交通省の都市計画現況調査によると、2021年3月31日時点における生産緑地に指定された面積は、全国で「12,128.8ha」あります。そのうち、東京都の面積が最も大きく、東京都の生産緑地面積は「2,972.6ha」です。

田園住居地域が指定される可能性がある場所は生産緑地面積が一番大きい東京都が最も高いと思われます。しかしながら、東京都ですらどこにも指定されていない状況となっています。

生産緑地は面的に大きく広がっているわけではなく、ポツポツと点在しているのが特徴です。ポツポツと点在している農地に対し、用途地域のような広く面的に制限をかける規制は行政側も適用しにくいのかもしれません。

3.田園住居地域内における建築等の規制内容

この章では田園住居地域内における建築等の規制内容について解説します。

項目 規制内容
絶対高さ制限 10mまたは12m以内
隣地斜線制限 適用なし
北側斜線 5m+1.25L
日影規制 軒高>7mまたは地上階数≧3なら適用
外壁後退 適用される場合がある
容積率 50、60、80、100、150、200
農地の開発行為 市町村長の許可が必要
300m2以上の農地の開発 原則不許可

3-1.絶対高さ制限

絶対高さ制限とは、建築可能な建物の高さを定めた規制のことです。田園住居地域では、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域と同じ絶対高さ制限が適用されます。

田園住居地域における建築物の高さは10mまたは12m以内です。10mか12mかについては、都市計画で定められます。

3-2.隣地斜線制限

隣地斜線制限とは、隣地に高い建築物が建つことで生じる環境条件の悪化を防止する高さ制限の一つです。隣地の採光や通風を確保することが目的となります。

隣地斜線制限は、絶対高さ制限がある田園住居地域と第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域には適用されません。よって、田園住居地域には隣地斜線の規制はかからないことになります。

3-3.北側斜線

北側斜線とは、住居系の用途地域において日照を確保するために建物の北側の高さを制限する規制のことです。北側斜線が適用される用途地域と制限内容は下表の通りです。

用途地域 制限内容
田園住居地域 5m+1.25L
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域 10m+1.25L
第二種中高層住居専用地域

田園住居地域では、平均地盤面から5mの高さの起点を設け、そこから真北の軸線上の水平距離に1.25の斜面勾配を乗じて制限高さを求めます。

なお、敷地が日影規制地域に指定されている場合には、10m以上の建築物は日影規制を受けるため、北側斜線を検討しなくても良いことになっています。

3-4.日影規制

日影規制とは、中高層建築物が近隣の敷地に日影を落とす時間を制限し、近隣の日照条件の悪化を防ぐ規制のことです。

敷地境界線から水平距離で5m超10m以内と、10m超の範囲で影が規制されます。具体的には冬至日の8時から16時(北海道では9時から15時)の8時間に、それぞれの範囲に影がかかる時間を制限する規制です。

日影規制は、建物の高さが10mを超える建築物が規制対象となります。田園住居地域では、建物に10mまたは12mという絶対高さ制限がありました。ただし、田園住居地域でも軒高7m超の建築物や地上3階建ての建築物は日影規制となります。

軒高7m超または地上3階建ての建築物が日影規制となるのは、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域も同じです。

田園住居地域および第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域では、平均地盤面から1.5mの水平面が測定面となります。

日影規制の規制時間は、下表のいずれかの中から地方公共団体が条例によって定めます。

隣地境界線から
の水平距離
田園住居地域・第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域
5<L≦10 3(2)、4(3)、5(4)
10<L 2(1.5)、2.5(2)、3(2.5)

()内の数値は北海道地区

3-5.外壁後退

外壁後退とは、建築物の周辺に空地を取ることで、日照や採光、通風等を確保することを意図した規制のことです。

田園住居地域および第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域では、都市計画で外壁の後退距離が定められることがあります。

外壁の後退距離の制限がある場合には、道路境界線や隣地境界線から建物の外壁の面を1.5mまたは1m以上離すことが必要です。

ただし、外壁の中心線の長さの合計が3m以下の部分や軒高が2.3m以下の物置等で、床面積が5平米以内の部分は外壁後退の制限が緩和されます。

3-6.容積率

容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことです。容積率は用途地域ごとに都市計画で制限割合が定められます。都市計画で定められる容積率のことを「指定容積率」と呼びます。

田園住居地域および第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域において、都市計画で定めることのできる容積率の割合は下表の通りです。

用途地域 田園住居地域・第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域
都市計画による指定容積率 50、60、80、100、150、200

都市計画では50%~200%まで定めることができるとされていますが、実際に第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域で指定されている容積率は100%と150%の2つが多いです。

そのため、田園住居地域でも100%や150%といった数値で容積率が指定されるものと思われます。

なお、容積率は前面道路の幅員に一定の係数を乗じて算出した数値と、指定容積率の低い方を採用するのがルールです。田園住居地域における道路幅員に乗じる係数は「0.4」となっています。道路幅員等を加味して最終的に求められる容積率のことを「基準容積率」と呼びます。

田園住居地域の基準容積率の求め方を例示すると、以下の通りです。

(条件)
用途地域:田園住居地域
指定容積率:150%
前面道路の幅員:4m

(計算方法)
前面道路による容積率 = 4m × 0.4
           = 160%

160%と指定容積率150%を比較すると指定容積率150%の方が低いため、当該敷地の基準容積率は150%となります。

3-7.農地の土地の形質の変更等には市町村長の許可が必要

田園住居地域は、生産緑地周辺に指定されることを想定された用途地域であるため、田園住居地域の中に農地があることが考えられます。

田園住居地域内の農地では、土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設または土石その他の政令で定める物件の堆積を行おうとする場合は、市町村長の許可を受けなければならないとされています。

田園住居地域は市街化区域内の用途地域であるため、田園住居地域内の農地は市街化区域内の農地ということです。 農地法では、市街化区域内の農地は農協委員会に届出するだけで転用することができます。

しかしながら、農地が田園住居地域内にある場合には、宅地化するために市町村長の許可を受けなければならないということです。

ただし、以下の場合には例外として市町村長の許可は不要となります。

【許可不要の例外】

・通常の管理行為、軽易な行為
・非常災害のため必要な応急措置として行う行為
・都市計画事業の施行として行う行為
・国または地方公共団体が行う行為(市町村長にあらかじめ協議することは必要)

3-8.農地で300m2以上の開発は原則不許可

田園住居地域内の農地では、土地の形質の変更等の開発行為を行う場合には、市町村長の許可が必要でした。

ただし、農地の面積が300平米以上の場合には、開発行為は原則不許可となります。つまり、田園住居地域内の農地で土地の形質の変更を行いたい場合には、原則として農地の面積が300平米未満であることが条件です。

300平米の規制は、あくまでも田園住居地域内の「農地」であるため、田園住居地域内の「宅地」は規制の対象外となります。

4.田園住居地域内の主な用途制限

田園住居地域で建築可能な建物の主な用途について解説します。

用途 建築可能な規模等
物販店舗・飲食店 2階建て以下、かつ、床面積が150平米以内
農産物直売所
農家レストラン
2階建て以下、かつ、床面積が500平米以内
サービス店舗※ 2階建て以下、かつ、床面積が150平米以内
義務教育施設 幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校
病院 建築不可
診療所、医院
助産所、施術所
建築可能

※サービス店舗:学習塾、理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、華道教室、囲碁教室、武道塾、音楽教室等

4-1.物販店舗と飲食店は150平米以内なら可能

田園住居地域では、「2階建て以下、かつ、床面積が150平米以内」であれば物販店舗および飲食店の建築は可能です。

「2階建て以下、かつ、床面積が150平米以内」の物販店舗および飲食店は、第二種低層住居専用地域では建築可能ですが、第一種低層住居専用地域では建築できません。

4-2.農産物直売所と農家レストランは500平米以内なら可能

田園住居地域では、「2階建て以下、かつ、床面積が500平米以内」であれば、農産物直売所と農家レストランの建築が可能です。

「2階建て以下、かつ、床面積が500平米以内」の農産物直売所や農家レストランは、第二種低層住居専用地域と第一種低層住居専用地域では建築できないことになっています。

そのため、農産物直売所と農家レストランに関しては、第二種低層住居専用地域よりも緩和された規制の部分であるということです。

4-3.学習塾は150平米以内なら可能

学習塾は、建築基準法上、サービス店舗に分類されます。サービス店舗とは、学習塾の他、理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、華道教室、囲碁教室、武道塾、音楽教室等が含まれます。

田園住居地域では、「2階建て以下、かつ、床面積が150平米以内」であれば、サービス店舗、つまり学習塾の建築は可能です。

「2階建て以下、かつ、床面積が150平米以内」のサービス店舗は、第二種低層住居専用地域では建築可能ですが、第一種低層住居専用地域では建築できないものとなっています。

4-4.義務教育施設は可能

田園住居地域では、幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校の建築は可能です。つまり、義務教育施設は建てることができます。

義務教育施設が建てられる点に関しては、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域も同じです。

一方で、田園住居地域と第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域では、共通して大学や高等専門学校、専修学校は建てられないことになっています。

4-5.病院は不可

田園住居地域では、病院は建築できないことになっています。病院が建築できない点に関しては、田園住居地域と第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域で共通して同じです。

一方で、診療所や医院、助産所、施術所は、田園住居地域と第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域においても共通して建てられることになっています。

5.田園住居地域の税制と固定資産税

田園住居地域では、農地であれば生産緑地でなくても一定の制限を受けます。具体的には、面積が300平米以上の農地は開発許可等が原則不許可になるという規制でした。

田園住居地域内の300平米以上の農地は、農地以外の転用が困難となっていることから、固定資産税に一定の軽減措置があります。

具体的には、田園住居地域における300平米以上の農地では、300平米を超える部分について固定資産税の課税標準額が2分の1になるという減額補正が適用されます。

つまり、田園住居地域内の農地では、300平米を超える部分の固定資産税は安くなるということです。

まとめ

以上、田園住居地域について解説してきました。

田園住居地域とは、農業の利便の増進を図りつつ、良好な低層住宅の環境を保護するための用途地域です2018年4月1日から誕生した用途地域になります。

2021年3月末時点における田園住居地域の指定状況はゼロであり、東京都にすら存在しない状況です。

田園住居地域における高さ制限や日影規制等の規制は、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域と共通している点が多くなっています。建築可能な用途は、500平米以内の農産物直売所と農家レストランなら建てられる点が特徴です。

田園住居地域はまだ指定事例がありませんが、第一号が指定されたあかつきには本記事を参考にしていただければと思います。

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執筆
不動産鑑定士、宅地建物取引士
竹内英二

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。大手ディベロッパーで長く不動産開発に関わってきたことから土地活用や賃貸借を得意としている。普段は不動産鑑定業だけではなく、法人や個人を問わず貸主や借主からの相談も多く受けている。大阪大学出身。

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