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知らないと大損する!? むずかしくない 不動産契約の話

契約後に住宅ローン審査に落ちたらどうなる!?手付金が戻ってこないケースに注意

契約後に住宅ローン審査に落ちたらどうなる!?手付金が戻ってこないケースに注意

知らないと大損する!?
不動産契約で陥りがちな落とし穴を、どこよりもわかりやすく解説する連載です。

今回の相談者は、夫と幼稚園に通う子どもがいる主婦のアズサさん(仮名)。今、築20年の中古マンションを購入し契約を結ぼうとしていますが、「実はちょっと心配ごとが……」と、弁護士のユウキ先生のもとを訪れました。

さて、どんな相談なのでしょうか。

登場人物

相談者"

アズサさん(32歳)
夫と幼稚園に通う子どもの3人家族。夢のマイホームに住むことを日々楽しみにしている。中古マンションの購入を決め、今、契約を結ぶ段階。

弁護士"

ユウキ先生
不動産の揉め事解決を得意としている弁護士。不動産に詳しくない人にもわかりやすい説明で人気。


契約後に住宅ローン審査落ち!売買契約を解除して手付金は戻ってくるの?

住宅購入に住宅ローンを利用する場合、契約前に住宅ローンの仮審査、契約後に本審査を受けます。
今回の相談は、ローンの仮審査が通り契約をしたのですが、契約後にまさかの本審査に落ちてしまったお話です。

アズサさんのママ友が中古マンションを購入し契約をしたのですが、まさかのローン審査落ちしてしまったらしいのです。

「ローン審査に落ちたのだから、売買契約も自動的に解除されると思っていたのに解除になっていなかった」と、売り主や媒介業者と揉めているそう。「自分もローン審査落ちてしまったら……どうなるの?」と心配になり、ユウキ先生に相談に来たようです。


ママ友が数か月前に中古マンションの購入契約を結んだのですが、その後、なんとローン審査が通らなかったらしいんです。ママ友は、ローンが借りられなければ売買契約も自動的に解除されると思っていたのに、解除されていないなくて、今、売り主や媒介業者と揉めているらしいんです。私も中古マンションの契約書をもらってきたのですが、先生アドバイスくださいー!

なるほど。お友達はいわゆるローン特約と呼ばれている契約書の「融資利用の特約」をよく読んでいなかったようですね。

ローンに関する特約!?「融資利用の特約」という項目がちゃんとあるんですね。

契約書の「融資利用の特約」、いわゆるローン特約とは?

融資利用の特約(ローン特約)とは、不動産を購入するために申し込んだローンが借りられない場合、買い主が不動産の購入契約をペナルティなしで解除できる特約をいいます。

通常、不動産購入の契約を締結する際、買い主は手付金を支払います。そして、その後買い主の事情で契約を解除する場合は、この手付金がペナルティとして戻ってきません。

しかし、住宅ローン審査に落ちてしまってマンションが買えないのに、手付金まで戻ってこないのは可哀想ということで、買い主保護のために、ローン特約を付けるのが一般的なのです。

契約書のココをチェックしよう!

特に注意して確認すべき箇所を、以下の赤字部分①~③で記載しています。

注意すべきポイント①「解除することができる」

この契約書には、「融資利用の特約」の項目もあるし、契約書の①の部分に「本契約を解除することができる」とあるので大丈夫そうですねー。安心しました!

いえいえ、アズサさん安心しないでください!「解除することができる」という記載にはなっていますが、この契約では、ローンの審査が通らなかったら不動産の購入契約も「自動的に解除される」とはなっていないですね。

買い主は、ローン特約で契約を解除するには、「融資未承認の場合の契約解除期限」(この契約では9月30日)までに、ローン特約で契約を解除することを連絡しないといけません。

一般的に「融資承認予定日」から「契約解除期限」までは1週間から10日程度の期間が設けられています。ですので、ローン審査に通らなかったら契約を解除するのか予め決めておき、解除するなら、すぐ売り主に連絡する必要があります。

このとき、媒介業者に口頭で契約解除を伝えてしまうと、それが売り主には伝わらず、トラブルになってしまうことがあります。口頭だと「言った」「言わない」といった話になってしまいますし、媒介業者もローンが下りなければ自動的に不動産の売買契約が解除されると勘違いしている場合があります。契約解除は、内容証明郵便で、直接売り主に送付し、その旨を媒介業者にも伝えるのがよいでしょう。

また、契約を締結する前に、ローン審査が通らなかったら自動的に解除されるという記載に変更しておく方法もあります。契約書は必ずきちんと読み、条件を変えたい場合などは、事前に弁護士に相談しましょう。

注意すべきポイント②「標記契約解除期日までに」

ローン審査が下りずに不動産の購入契約を解除する場合、期限までならば手付金が返ってくるのに、この期限を過ぎてしまうと手付金は返ってきません。手付金といっても売買代金の10%程度が相場なので、数百万円を無駄にしてしまいます。

1社目ではローン審査が下りなかったが、まだ貸してくれそうな金融機関がある場合は、売り主・媒介業者と相談し、この解除期限を延ばす合意を書面で結んでおくことが重要です。2番目の金融機関でも審査が下りなかったときに、既に解除期限が過ぎてしまっていると、ローン特約に基づいて解除ができず、手付金を返してもらえないからです。

また、ローン特約で解除の期限が決められていない場合(上記の契約例で「融資未承認の場合の契約解除期限」が空欄の場合)も、要注意です。

「住宅ローンの利用を予定した不動産売買において、ローンが実行されない場合には、買主はすみやかにローン条項を適用して契約を解除するか、他の方法で資金を調達するかを選択すべきであり、(解除期限が空欄になっている契約書でも)相当期間経過後は、ローン条項による契約の解除権は消滅する」とした判例があるからです(東京高判平成7年4月25日判決)。

この判例では、契約解除期限が契約に記載されていなくても、相当期間を1か月程度と判断し、相当期間経過後のローン特約による解除は認めないとしています。

期限が書いていない場合でも、ローンが下りないことが分かり、他の金融機関から資金調達する予定がないのであれば、売り主にローン特約による解除の通知を速やかに送付しましょう。

注意すべきポイント③「必要な手続きをせず……故意に虚偽の証明書等を提出」

じゃあ、ちょっとズルいかもですけど、契約締結した後、もっといい物件が出てきて、わざと審査が通らないようにするのってありですか? 

それはダメですね。注意したいのは、用意すべき資料を用意しなかったり、嘘の記載をしてわざと審査に落ちるようにしてしまった場合は、ローン特約での解除はできない、つまり手付金を返してもらえないということです。

契約をしたあとに、もっといい物件が見つかったので契約を解除したい、というのは、完全に買い主の勝手な都合。この場合は、本来の約束通り手付金の返還はあきらめ解除するしかありません。

実際に、買い主が住宅ローンの申込みをするに当たり、虚偽の内容が記載されている課税証明書を提出し、延滞税の支払が生じる状況にあることを報告しなかったためローン審査が通らなかったケースで、「不実・虚偽の申告により融資が否認された場合はローン特約による解除は出来ない」とし、媒介業者に支払った手数料200万円の返還は受けられないとした判例があります(東京地判平成28年7月19日判決)。

ローン特約は、誠実に努力した買い主が、ローン審査に通らず金銭の工面ができないという状況を保護するためのものです。特約の趣旨とは異なる形での解除には使えないので、注意が必要です。

今回のポイント


  1. 契約書に「融資利用の特約」、いわゆるローン特約の項目が入っているか。
  2. ローン特約の内容が、融資が通らなかった場合、不動産売買契約が自動的に解除されるようになっているか。
  3. ローン特約による解除はいつまで可能か。

監修:熊谷祐紀弁護士

オウチーノニュース編集部

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