子どもの「大学費用の捻出方法」をお金のプロが解説!奨学金の最新情報とは

奨学金という言葉にどんなイメージをお持ちでしょうか?
成績が優秀な学生に与えられる奨励金という響きがあるかもしれません。しかし今の日本では、学費をまかなうために学生自身が借りるお金のことを示すことが多くなっています。
日本の奨学金事業を担う日本学生支援機構の貸与型奨学金は、平成29年度では日本の大学や専修学校で学ぶ学生の2.7人に1人(※1)に利用しており、大学の学費は親からの支援だけではまかなえない現実が浮き彫りになっています。
※1 独立行政法人日本学生支援機構 平成31年3月入札説明会用IR資料より
大学生活にかかる費用の目安
大学費用の捻出を考えるために、まずは大学生活にかかる費用を把握するところから始めていきましょう。
<4年間でかかる学費>
目指す進学先によってかかる費用が変わるのはもちろんですが、ここでは国内の大学に進学した場合の学費の平均額を示してみます。
出典:独立行政法人日本学生支援機構奨学金ガイドブック2019
単位 (万円) |
国立大学 (標準額) |
私立大学 (文科系) |
私立大学 (理科系) |
私立短期大学 (全平均) |
---|---|---|---|---|
入学金 | 28.2 | 23.2 | 25.5 | 24.5 |
授業料 | 53.6 | 78.1 | 110.2 | 70.0 |
施設設備費・その他 | ‐ | 15.2 | 18.4 | 17.5 |
初年度合計 | 81.8 | 116.5 | 154.1 | 112 |
4年間合計 (短期大学は2年間) |
242.6 | 396.4 | 539.9 | 199.5 |
※ 国立大学の「施設設備費・その他」は、大学によってはかかることがあります。
※ 国立大学:平成30年度標準額 私立:平成29年度昼間部平均)
<学費以外にかかる費用>
学費以外に学生生活にかかる費用は、自宅から通うか、一人暮らしをするかで大きく変わります。
一人暮らしの方が出費は多くなり、初期費用(アパートの敷金や家財道具の購入費など)は平均37.4万円(※2)かかっています。継続的には一人暮らしだと家賃や生活費、自宅通学者でも交通費などがかかります。
※2 株式会社日本政策金融公庫 平成30年度「教育費負担の実態調査結果」より
他にも入学前の受験時にかかる費用もあります。複数の大学を受ければ受験料がかさみますし、遠方の大学を受験するために、交通費や宿泊費が予想外に大きくなることも珍しいことではありません。
計画的に貯める
大学費用は大きな金額になりますが、実はとても計画的に貯めやすい費用です。わが子が生まれた瞬間から、大学入学の時期はほぼ18年後、また目標額の目安もわかっています。
たとえば私立文系の大学に進学することを想定し、現在の学費データを基に、学費分の400万円を18年間で貯める計画を立ててみましょう。
子育て世帯には「児童手当」があります。所得制限にかからない世帯であれば、それを全て貯蓄しておくと、子ども1人あたり約200万円貯まります。
家計から残りの半分200万円を18年間で貯めるとすれば、
200万円÷18年÷12か月=9,259円/月
となり、子ども1人当たり月々約1万円をコツコツ貯めれば、立派に教育費が準備できます。
時間は資産を作るうえで何よりも強い味方です。
今、子どもがまだ小さいご家庭ならば、少しでも早く何らかの方法で少しずつでも積立て貯蓄をしていくことを強くおすすめします。
もし今から貯めても間に合わない!頑張ったけど足りない!という場合には「奨学金」が味方になってくれます。
お金で諦めない!奨学金の活用
奨学金の中には「給付型」という返済不要のものがあります。
これは自治体、民間企業、個人設立の財団などが大学等で独自に設けていることもあります。また日本学生支援機構が実施している給付型奨学金も2020年4月から利用できる世帯の枠が広がり、給付額も増えます。
日本学生支援機構の給付型奨学金を利用するための条件の一つには世帯の年収があり、条件に合わないご家庭では「貸与型」を利用することになります。貸与型は冒頭で触れたとおり、学生自身の借金です。
最も利用者の多い日本学生支援機構の貸与型の奨学金には、利息が付くものと付かないものがあります。利息が付くものであっても金利はとても低く抑えられ、さらに在学中には利息がつきません。
返済開始も卒業してから7か月後です。
なお、奨学金ではありませんが、国立大学であれば授業料免除制度(※3)もあります。条件があえばそういう制度を利用するのもよいでしょう。
※3 文部科学省 授業料免除選考基準の運用について
まとめ
奨学金は、給付型の利用をまず検討したいのはもちろんですが、貸与型を利用する場合でも、不安を持つことのないよう、正確な最新情報を集めて制度を良く理解することが大切です。
子どもがその可能性を広げ、学びの喜びに満ちた大学生活が送れるように、親子でお金と心の準備をしておきましょう。
執筆者プロフィール
小峯洋子
キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャル・プランナー/
DCプランナー(企業年金総合プランナー)/FP事務所 はっぴーまねープランニング代表
不動産会社、住宅メーカーで設計部勤務を経て、夫の転勤により退職、子育てに専念。第2子の乳児期にファイナンシャル・プランナー資格を取得し、2014年にFP事務所を立ち上げた。子育て世代に役立つマネー講座の開催や、若い世代への金融教育に力を入れている。

キッズ・マネー・ステーションとは、「見えないお金」が増えている現代社会の子どもたちに、物やお金の大切さを知り「自立する力」を持ってほしいという想いで設立。全国に約160名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行います。2018年までに1000件以上の講座実績を持っています。