容積率・建ぺい率って何?計算方法、条件緩和の裏ワザを解説!

こんにちは、ファイナンシャルプランナーの鈴木です。
家を建てたり、買ったりするときに「容積率」や「建ぺい率」という言葉を耳にすることがあります。土地の価値をも決めてしまうと言われる容積率と建ぺい率。言葉の意味を調べてみましょう。
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容積率とは
容積率とは、敷地面積に対する延べ面積の割合をいいます。
延べ面積とは各階の面積の合計のことです。
1階が100平米、2階が80平米、3階が60平米の建物であれば、延べ面積は100+80+60=240平米になります。
容積率は土地を買ってそこに家を建てようとするときによく使われます。たとえば「この土地は敷地面積が140平米、容積率150%だから、建物の延べ面積は210平米ですね」といった具合です。
希望する延べ面積の建物が建てられるかどうかは、その土地の広さと容積率によって決まります。広さが同じ土地でも容積率によって建てられる延べ面積が違うということは、容積率が土地を選ぶときの重要な指標であることを意味します。
容積率の計算方法
容積率の計算式は次のようになります。
容積率=延べ面積÷敷地面積
たとえば延べ面積160平米、敷地面積200平米であれば160÷200×100で、容積率は80%になります。商業地域などでは容積率が300%、400%、500%…と高い数値になっています。
これから土地に家を建てようとしているなら容積率を使って建てられる家の延べ面積を計算します。
敷地面積×容積率=延べ面積
160平米の土地の容積率が200%であれば、延べ面積は320平米です。
容積率は延べ面積の占める割合の上限なので、必ずしもその割合分すべての面積を確保しなければならないということではありません。
容積率は土地がどのように道路に面しているかで土地が本来指定されている容積率(指定容積率)よりも低い数値に制限されることがあるので注意が必要です。
前面道路の幅(幅員)が狭いとき
前面道路の幅が12m未満の場合は次のうち、小さい方が容積率になります。
- 指定容積率
- 前面道路の幅員×法定乗数(住居系0.4、その他0.6)
例で考えてみましょう。指定容積率が200%、前面道路の幅員が4mの住居用の土地があったとします。
- 指定容積率=200%
- 前面道路の幅員(4m)×法定乗数(住居系0.4)×100=160%
小さいほうが容積率として採用されますので、この場合の容積率は160%になります。
セットバックが必要なとき
セットバックがあるときは前面道路の幅員にセットバック分を加えて計算します。計算方法は上と同じです。こちらも例で考えてみましょう。指定容積率が100%、前面道路の幅員が3m、セットバックが1mの住居用の土地があったとします。
- 指定容積率=100%
- 前面道路の幅員(3m)+セットバック分(1m)×法定乗数(住居系0.4)×100=160%
小さいほうが容積率として採用されますので、この場合の容積率は100%になります。
セットバックの土地で容積率を使って延べ面積を求めるときの注意事項は、敷地面積からセットバック分の面積を除かなければいけない点です。敷地面積300平米の土地があり、そこにセットバック部分が15平米含まれていたとします。その場合、敷地面積は285平米として扱われます。
容積率の異なる二つの敷地にまたがるとき
所有する土地が容積率の異なる二つの敷地にまたがっていることがあります。この土地に建物を建てる時は、最初にそれぞれの土地の延べ面積を計算してから、両者を合算します。合算した延べ面積を二つの敷地の合計面積で割れば、二つの土地を合わせたときの容積率が求められます
容積率緩和の特例について
条件を満たすケースでは容積率が緩和されることがあります。ここでは代表的なものを紹介します。実際にこの特例を活用するときはこれから記載する事項以外にも細かい条件が必要になりますので必ず専門家の判断を仰いでください。
駐車場等の容積率の緩和
屋根のある駐車場や駐輪場は延べ面積に含まれるものですが、その面積を含めてすべての建築物の延べ面積の5分の1を限度として、駐車場や駐輪場は延べ面積から除外することができます。
たとえば敷地面積300平米の土地に延べ面積200平米(駐車場部分の床面積30平米を含む)の建物があるとします。200平米の5分の1にあたる40平米までは駐車場面積を除外できますので、このケースでの延べ面積は170平米になります。容積率は170÷300×100=56.66%です。
地下室の容積率の緩和
条件を満たす建築物の住宅の「地階」については、住宅の用途に供する部分の床面積の合計の1/3を限度として延べ面積を不算入とすることができます。
これも例で考えてみましょう。たとえば地階(容積率の緩和条件を持たすもの)、1階、2階がそれぞれ80平米の戸建て住宅があるとします。この戸建ての延べ面積は80×3=240平米です。ここから1/3にあたる80平米を延べ面積に入れないことができますので、延べ面積は160平米になります。
建ぺい率とは
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合をいいます。
この説明だけで理解できる人はそうはいないでしょう。容積率とどう違うのか。いまひとつわからないですよね。
建ぺい率が使われるシチュエーションを思い浮かべてみましょう。建ぺい率は土地を買ってそこに家を建てようとするときによく使われます。たとえば「この土地は敷地面積が140平米、建ぺい率60%だから、建築面積は84平米ですね」といった具合です。
建ぺい率を考えるとき重要なのは、土地と建物を真上からみた図を頭の中にイメージすることです。
土地面積をはみ出す建物面積というのはありえませんので、建ぺい率が100%を超えることは理屈上ありえません。建物には複数階建てのものもありますよね。この時も真上からみた図で考えてください。もし2階建ての建物で1階よりも2階のほうが面積が広ければ2階の面積が建築面積になります。必ずしも土地と接地している部分が建築面積ではない、ということが重要です。
同じ土地の広さでも建ぺい率次第で建設できる面積が違ってくるわけですから、これは土地の価値に直結する大事な数値です。
なかには自分の土地なのにその上に建てる建物の面積が制限されるなんておかしいと考える人もいるかもしれません。しかしみんながみんな、100%の建ぺい率で建物を建ててしまったら、防災や風通しの観点から非常に望ましくない街並みが形成されてしまいます。建ぺい率はそうしたことを防ぐ目的で定められているんです。
建ぺい率の計算方法
建ぺい率の計算式は次のようになります。
建ぺい率=建築面積÷敷地面積
たとえば建築面積80平米、敷地面積200平米であれば80÷200×100で、建ぺい率は40%になります。
また、これから土地に家を建てようとしているなら建ぺい率を使って建築面積を計算します。
敷地面積×建ぺい率=建築面積
160平米の土地の建ぺい率が60%であれば、建築面積は96平米になります。 建ぺい率は建物面積の占める割合の上限なので、必ずしもその割合分すべてを建物にしなければならないというわけではありません。
建ぺい率の異なる二つの敷地にまたがるとき
所有する土地が建ぺい率の異なる二つの敷地にまたがっていることがあります。この土地に建物を建てる時は、それぞれの土地の建築面積を計算してから、両者を合算します。合算した建築面積を二つの敷地の合計面積で割れば、二つの土地を合わせたときの建ぺい率が求められます。
建ぺい緩和の特例について
建ぺい率は30%~80%の範囲で設定されていますが、当初の範囲が緩和され、10%または20%を増やせるケースがあります。鍵となるのは次の条件です。
- 角地であること
土地が角地にある、特定行政庁の指定があれば、建ぺい率が10%加算されます。角地指定の基準は各自治体で異なりますので、個別の確認が必要です。
- 防火地域内・準防火地域内にある耐火建築物等
防火地域内にある土地であれば耐火建築物または延焼防止建築物を建築すること、準防火地域内にある土地であれば耐火建築物・準耐火建築物または延焼防止建築物・準延焼防止建築物を建築することで、建ぺい率が10%加算されます。
たとえば防火地域内にある耐火建築物で、それが特定行政庁が指定した角地にあるのであれば建ぺい率を20%加算することも可能です。
容積率や建ぺい率の目的。地域差は?
容積率や建ぺい率は建物と街並みと調和、防災面などの都市計画の観点から必要なものです。そのため、計画的な市街地形成のために区分けされた用途地域に応じてその割合が設定されています。用途地域ごとの容積率、建ぺい率は次の表のとおりです。
用途地域 | 容積率(%) | 建ぺい率(%) |
---|---|---|
第一種低層住居専用地域 | 50・60・80・100・150・200 | 30・40・50・60 |
第二種低層住居専用地域 | 50・60・80・100・150・200 | 30・40・50・60 |
田園住居地域 | 50・60・80・100・150・200 | 30・40・50・60 |
第一種中高層住居専用地域 | 100・150・200・300・400・500 | 30・40・50・60 |
第二種中高層住居専用地域 | 100・150・200・300・400・500 | 30・40・50・60 |
第一種住居地域 | 100・150・200・300・400・500 | 50・60・80 |
第二種住居地域 | 100・150・200・300・400・500 | 50・60・80 |
準住居地域 | 100・150・200・300・400・500 | 50・60・80 |
近隣商業地域 | 100・150・200・300・400・500 | 60・80 |
商業地域 | 200・300・400・500・600・700・800・900・1000・1100・1200・1300 | 80 |
延べ面積、建築面積に含むもの、含まないもの
容積率や建ぺい率の要件をしっかりと満たしたうえで居住スペースを広く設計するには、延べ面積、建築面積に含まれるもの、含まれないものを把握しておく必要があります。とりわけ含まれないものの把握は土地を有効活用するうえで重要です。
延べ面積に含まれないもの
玄関ポーチ
玄関の外で壁や柱によって囲まれていない玄関ポーチは延べ面積に含まれません。もちろん、門から玄関へと続くアプローチも対象外です。
ロフト
ロフトは、ロフトの面積が床面積の1/2未満であること、天井の高さが1.4m以下であること、はしごが固定されていないことなど、いくつかの要件を満たせば延べ面積から除外できます。
ベランダ・バルコニー
外壁から2mを超えない範囲であればベランダやバルコニーは延べ面積から除外できます。
建築面積に含まれないもの
軒・庇
外壁から軒や庇が付きだしている場合、外壁の中心線から1mまでの部分は建築面積から除外できます。1m以上突出している場合は1m分を除外して計算します。
物置・小屋
建築物(土地に固定されていて、屋根や柱、壁があるもの)は基本的に建築面積に算入しなければなりません。ただし、物置や小屋のうち、人が立ち入って作業しない小規模なものは建築面積に含ませる必要はありません。
容積率、建ぺい率を守って広い家を建てるには
容積率と建ぺい率がどのようなものかだいぶイメージできたのではないでしょうか?
たとえば土地面積120平米、容積率100%、建ぺい率50%の土地を取得したとします。もっともシンプルなのは各階60平米の2階建ての一戸建てを建てることです。この場合、カーポート型の駐車場は設置できないので、青空駐車場とする必要があります。外壁から1m以内であればバルコニーも設置可能です。
ほかには容積率緩和の特例を利用して地下室を作り、収納スペースや趣味の部屋として活用する方法もあります。その分、建築費は高くなりますので、予算と相談しながら決めましょう。
容積率、建ぺい率で知っておきたいQ&A
Q&A形式で容積率、建ぺい率をチェックしましょう。これまでに説明したことの復習にもなります。
容積率は最大で何%? なんでそんなに大きいの?
住宅地の容積率は50%~200%の範囲で設定されているケースが大半です。この数値が大きいほど延べ面積の広い家を建てることができます。商業地では容積率が200%を優に超えるところがあります。それくらい数値が大きくならないとマンションが建てられないからです。
容積率、建ぺい率がオーバーしたら住宅ローンは組める?
いずれの場合も建築基準法に違反するため検査済証が発行されません。検査済証が発行されない住宅に対して金融機関が住宅ローンを承認することはありませんので、住宅ローンは組めない、というのが答えになります。また竣工時には要件を満たしていても、現時点で容積率、建ぺい率を満たしていない物件(既存不適格建築物)を中古で取得するときも同様に住宅ローンの借入は難しくなります。
違反するとどうなる? 違反物件と既存不適格の違いは?
容積率、建ぺい率の要件を満たさない物件には検査済証が発行されませんので、そもそも建築物として利用することができません。なかには既存物件を増改築していくなかで容積率、建ぺい率の上限を超えてしまっているものがあります。こうした物件を違反物件、または違反建築と言います。違反物件に対しては行政から是正の勧告がなされます。
既存不適格建築物は、竣工時には要件を満たしたものの、都市計画の変更等によって容積率、建ぺい率を満たさなくなってしまった物件です。既存不適格建築物でも安全性に問題がある場合は行政からの勧告・是正命令の対象になります。
容積率、建ぺい率がオーバーしている物件の価値は?
容積率、建ぺい率をオーバーする物件はその評価が極端に落ちることになります。住宅ローンの審査が通らないため買える人も少ないので、市場価格で売却することも簡単ではありません。
もし、あながこれから家を建てるのであれば、容積率、建ぺい率の範囲で建築することはもちろんですが、リフォームなどの際にも十分に注意が必要です。ライフスタイルの変化によって自宅を売りに出したい、となったときに、容積率、建ぺい率オーバーの家では買い手がつきづらく困ったことになります。
容積率、建ぺい率以外に家造りのルールは?
この記事では容積率、建ぺい率が家づくりに及ぼす影響を説明しましたが、家づくりではこれ以外にも守るべきルールはたくさんあります。建物の敷地と道路が2m以上接していなければならない「接道義務」、第一種低層居住地域、第二種低層居住地域、田園居住地域に該当する地域で適用される「絶対高さ制限」、建物周辺の日当たりや風通しを確保することをために屋根に勾配面をもたるなどして高さを制限する「斜線制限」などです。ほかに自治体が基準を決める「日影規制」「高度地区指定」などもあります。
家を建てるときはこうした規則をすべてクリアしなければなりません。建築基準法で定められているものから、各自治体が独自に設定しているものまで様々なルールがありますので、専門家としっかり話し合って決まりを守った家づくりをしましょう。
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出版社で5年、Webメディアで10年の勤務後に独立。独立後最初の確定申告で大きくつまづき、以後、本業のかたわら独学で社会保険、不動産、金融等の知識習得に励む。2018年、ファイナンシャルプランナーに。得意ジャンルは不動産で、実生活では中古マンションの購入、リフォーム、賃貸、売却を経験。やさしい日本語でにっぽんの制度や仕組みを説明する「やさしい にっぽん」を企画・運営。ほか執筆記事にパートだから社会保険に加入したくない。【2022年の条件は?】など。