不動産を売却したとき翌年の住民税はどのくらいかかるの?

酒向 潤一郎
監修: 税理士 酒向 潤一郎
不動産を売却したとき翌年の住民税はどのくらいかかるの?

こんにちは、オウチーノニュース編集部です。

不動産を売却する際、「いくらで売れるか?」ということにばかり目が行きがちですが、家を売った時には費用や税金がかかることを忘れてはいけません。

代表的な例として不動産会社などに支払う仲介手数料がありますが、その他にも場合によっては住民税や所得税が発生します。今回はこれらのうち、不動産売却時にかかる「住民税」について、支払う金額やタイミングなどを解説します。

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不動産売却にかかる「所得税」と「住民税」

不動産売却の「利益」に税金がかかる

冒頭で「不動産売却には税金がかかる」と説明しましたが、実際には「不動産売却によって得られた利益に対して税金がかかる」と言った方が正確です。つまり、売却価格そのものではなく、売却によって得られた利益だけが課税対象となり、確定申告が必要となります(売却額よりも購入額の方が大きい場合(=利益が出ていない場合)は税金はゼロ)。

これは「分離課税」と呼ばれる仕組みで、不動産などの譲渡所得に対しては、給与所得や事業所得とは別に分けて課税される決まりになっています。

税目は「所得税」と「住民税」。ただし申告は所得税のみ

譲渡所得に掛かる税金の具体的な税目は「所得税」と「住民税」です。しかし、確定申告で行うのは所得税の申告のみ。所得税の申告をすれば、同時に住民税の申告もすませたことになりますので、住民税を単体で計算・申告する必要はありません。

住民税はいつ支払うのか?

所得税の納付(確定申告)期限はその年の曜日によって前後しますが、原則3月15日です。(納期限が土曜日、日曜日、国民の祝日・休日の場合は、その翌日になります。)一方、住民税は、申告後に住民税納付書が送付されてくるので、指定の金融機関にて支払うことになります。各市町村によって異なりますが、6月、8月、10月、翌年1月のように4期に分けて納付できるようになっています。一括での納付も可能です(普通徴収の場合)。なお納付方法として「特別徴収」を選択すれば、給与からの天引きで支払うことも可能です。

譲渡所得の住民税はどうやって計算するの?

住民税は所得税とセットで計算されるため、譲渡所得によって住民税単体でどのくらい課税されるのかを知る機会は少ないかもしれません。申告が不要とはいえ、金額の目安については基本的な知識として知っておきたいところ。そこで、具体的な数字を使ってシミュレーションしてみましょう。具体的な計算の前に、所得税と住民税の税率について説明します。税率は、不動産の所有期間によって以下の通り異なります。

短期譲渡所得(所有期間5年以下):所得税率=30.63%、住民税率=9%、合計税率=39.63%
長期譲渡所得(所有期間5年超):所得税率=15.315%、住民税率=5%、合計税率=20.315%

※平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加算されます。

次に、譲渡所得(課税対象となる金額)を以下の式で計算します。  

譲渡所得金額=土地や建物を売った金額-(取得費+譲渡費用)  

取得費
取得費とは、売った土地や建物の購入時の代金や、仲介手数料などの購入手数料、登録免許税、不動産取得税、土地の改良費、設備費などの合計額をいいます。

また、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。取得費の内訳、計算方法などは、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:不動産の取得費の計算方法は?金額が分からないときの調べ方も解説

譲渡費用
譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことです。土地や建物を売るために支払った仲介手数料や印紙税で売主が負担したものが該当します。詳しくは以下を参照してください。

関連記事:不動産売却時の譲渡費用とは?譲渡費用や取得費に該当するものも紹介

上記の式で譲渡所得金額が求められたら、最後に以下の式に当てはめて税額を算出します。

税額=譲渡所得金額×税率

以上から、例えば譲渡所得金額が1500万円の場合、税額は以下の通りとなります。

<長期譲渡所得の場合>

所得税:1500万×15.315%=229万7,200円(100円未満切り捨て)
住民税:1500万×5%=75万円
合計税額=304万7,250円

<短期譲渡所得の場合>

所得税:1500万×30.63%=459万4,500円
住民税:1500万×9%=135万円
合計税額=594万4,500円

控除を受けられるかチェックしよう

譲渡所得にかかる税金は、いくつかの控除を受けられることがあります。主な項目としては次の3つを覚えておきましょう。

1. 3000万円の特別控除

居住用の不動産を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得(利益)から3,000万円を控除するという特例です。ただしこの特例では、売った年、その前年及び前々年にマイホームの買い換えたときの特例の適用を受けていないことなどが条件となります。

出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

2. 所有期間10年超の場合の軽減税率

売却した不動産の売却した年の1月1日において所有期間が10年を超える場合、1.3000万円の特別控除と合わせて軽減税率を適用できます。ただし1と同様に、その前年及び前々年にマイホームの買い換えたときの特例の適用を受けていないことなどが条件となります。

出典:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

3. 買い換えの特例

居住期間が10年以上で、売却した年の1月1日において10年を超えて所有した居住用の不動産を買い替える際、売った金額よりも買い替えた金額が大きい場合、一定の要件を満たせば譲渡所得(利益)に関わらず、譲渡所得税の納付を新居の売却時まで繰り延べることができるという特例です。税金を支払うために預貯金を切り崩したり、金融機関からお金を借りるといった税金の負担を減らす必要がなくなります。

いくつかの適用要件があり、譲渡価格が1億円以下、3,000万円の特別控除やマイホームを売った時の軽減税率の特例の適用を受けていないこと、買い換える建物の床面積が50平方メートル以上、土地の面積が500平方メートル以下などです。

出典:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」

これらの特例は利用できればかなりの節税につながりますので、自分が適用条件を満たしているかをチェックし、活用したいところです。わからないことがあれば、税理士に相談してみるのもよいでしょう。 またこれらの特例を受けるためには、確定申告が必要になります。

不動産の売却にはさまざまな出費も伴います。特に譲渡所得にかかる税金は支払うタイミングがずれるため盲点になりがちです。不動産の売却後、想定外の出費で生活に影響を及ぼさないためにも、どの程度の費用がかかるのが把握しておくことが大切です。

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酒向 潤一郎
監修
税理士
酒向 潤一郎

J’sパートナー総合会計事務所(酒向潤一郎税理士事務所)にて、税理士として会計事務所の経営を行う一方で、東証一部上場IT企業の事業開発責任者や事業会社の監査役、ベンチャー投資会社のパートナーなどを務める複業税理士。会計専門誌などにも複数寄稿。趣味が高じて学童野球連盟の監査役やスポーツクラブの監事も務める。

執筆
オウチーノニュース編集部

マイホーム購入のダンドリ、不動産売却にかかる費用、賃貸物件の探し方など、住まいの基礎知識から契約、税金といった専門的な内容までわかりやすく解説。宅地建物取引士や司法書士、税理士、FPなどの不動産・お金の専門家が、監修・執筆した記事を配信しています。
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