工業地域に住宅は建てられる?工業系用途地域3つの特徴について

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建築基準法では「用途地域」ごとに、建てることのできる建築物と建てることのできない建築物が明確に区別されています。

「用途地域」は住居、商業施設、工業地帯が混在することで住宅の居住性や商業・工業の利便性が損なわれることのないようにという配慮の下に制定されたもので、住居系、商業系、工業系の3種類の地域に大別することができます。

今回は、この中の工業系地域について説明していきます。

工業系の用途地域とは?

工業系地域と聞くと工業地帯や工業団地を想像する方も多いかもしれませんが、実は工業系の用途地域には「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」の3つがあり、それぞれに用途制限が異なります。

例えば「工業専用地域」はその名のとおり工業専用地ですから、工業系の地域の中で最も規制が厳しく、13種類の用途地域の中では唯一、住宅を建てて住むことができません。

しかし、「工業地域」と「準工業地域」に関しては住宅を建てることもできますし、規制も比較的緩やかです。

気になるのは、現実的に工業系地域に家を建てて住んでいる人がいるのかどうか、住宅用地として工業系地域に土地を買っても大丈夫なのかどうか、ということですよね。

工業系地域の現状はどうなのか、用途制限の内容や周辺環境について、もう少し詳しく見ていきましょう。

意外と利便性が高い準工業地域

今住んでいる市区町村の用途地域を調べてみると、きっと「準工業地域ってこんな所にあったの?」と驚かれることでしょう。
そうです、準工業地域は意外と身近な所にあるのです。

都市計画法では、準工業地域について以下のように定めています。

準工業地域は、主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域とする。(引用:都市計画法第9条11項)

つまり、工業系地域とはいっても危険性の高い工場や環境を悪化する恐れのある工場は建てることができないのに対し、店舗や公共施設、レジャー施設、学校や医療機関、福祉施設など、ほとんどの用途の建築物を建てることができる、非常に利便性の高い地域なのです。

都市開発によって新しく道路が開通し、大型店舗が立ち並ぶことも珍しくありません。

タワーマンションが建っていることも多い工業地域

工業地域は、主として工業の利便を増進するため定める地域とする。(引用:都市計画法第9条12項)

工業地域は都市計画法で上記のように定められており、必ずしも安全な工場ばかりではなく危険性の高い工場や環境悪化の恐れのある工場でも建築が可能とされています。

住宅を建てて住むことはできますし、事務所や店舗も建築可能ですが、宿泊施設や一部レジャー施設、学校や幼稚園などは規制されています。

居住環境として良好とは言えませんが、生活する上での利便性は悪くないため、周辺環境をよく見て立地を選び、居住する分には大きな問題はないでしょう。

ただし、工業地域である限り、今後どのような建物が建つかわからないということは頭に入れておいて下さい。

工業地域は日影規制の適用がないため、大規模な工場が閉鎖した跡地の開発により、高層ビルやタワーマンションが建築されることが多いのも特徴の1つです。

住むことができない工業専用地域

工業専用地域は用途地域の中で唯一、居住することのできない地域だと先にお伝えしました。
都市計画法では以下のように定められています。

工業専用地域は、工業の利便を増進するため定める地域とする。(引用:都市計画法第9条13項)

コンビナートや工業団地の他、大規模な工場が立ち並ぶ工業地帯はほぼ工業専用地域に指定されていると考えて間違いないでしょう。

用途の規制が厳しく、住宅を建てて住むことができないのはもちろんのこと、工場や倉庫の他に建築可能な建物と言えば、事務所や公共施設(体育館、テニス練習場以外)、福祉施設の一部で、それ以外の生活圏に必要な用途の建築物についてはすべて規制対象となっています。

工業系地域の「建物」の売買で気を付けるべきこと

工業系の地域は「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」のいずれであるかによって、利便性が大きく異なります。

建物を売買するにしても、どんな建物を売るのか、何を目的に建物を買うのかによって、注意点は違ってくるでしょう。

戸建て住宅の売却は「工業地域」ではかなり難しいでしょうから、場合によっては相場よりも安く手放す、土地だけの価格で売却することも検討する必要があるでしょう。

「準工業地域」の場合は、ファミリー層にもまだ抵抗なく受け入れられることが多いずです。

土地を購入する側としても、現状の立地が良好だからといって「工業地域」に住宅を買うことは、あまりおすすめできません。

しかし、「準工業地域」であれば土地代も比較的安く、利便性や居住環境にも大きな問題はないでしょうから、掘り出し物に出会える可能性もあるでしょう。

ただし、すぐ近くに大きな工場があると、人や車の出入りで朝夕混雑するかもしれませんし、騒音の問題もあるかもしれません。平日や休日の朝昼晩と時間を変えて、何度も下見するようにして下さい。

工業系地域の「土地」の売買で気を付けるべきこと

「工業専用地域」や「工業地域」で土地を売る場合、最も手っ取り早いのは近隣の工場へ掛け合ってみることです。

話をしてみて、あまり需要がないと感じた場合は、多少低い金額を提示されたとしても早めに売却してしまうことが得策でしょう。

「準工業地域」の土地は比較的売却もしやすいです。
しかし、危険物は扱っていなくても、工場が建っていることによって日照や通風に影響があったり、人や車の出入りが多く混雑したり、騒音や臭いがある場合は、敬遠される可能性があります。

住宅地として売るのか、事務所や店舗用地として売るのか、工場用地として売るのか、まずは売り方をしっかりと考えましょう。

工業系地域で土地を購入する場合は、安いからと慌てて飛びつくのではなく、下見をしっかり行うことが大事です。
住宅用地として購入する場合には、通勤路や通学路の他に混雑時の迂回路も確認しておきましょう。

「工業専用地域」の例外として、複数の工場の従業員が利用するためのコンビニや食堂については、許可を受けることで建築が可能です。
「工業専用地域」に土地をお持ちの方は、土地活用の選択肢の1つとして、覚えておいて下さい。

まとめ:工業系地域の売買には下調べが重要

工業系の地域というと、居住用としてはあまりよい印象を持たない方が多いでしょう。

しかし、「準工業地域」であれば、選び方によっては意外とよい土地や建物を見つけることができるかもしれません。

住宅や住宅用を購入する際には用途地域だけで判断するのではなく、工業系地域のメリット、デメリットを知った上できちんと下調べを行い、居住するのに適した土地を探してください。

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執筆
宅地建物取引士/2級建築士/既存住宅状況調査技術者
いしわたさとみ

建築設計事務所、不動産会社、建設会社等での勤務を経て、現在はフリーランスの不動産・住宅・建設ライター、住宅営業、建設CADオペレーターとして活動。3児の母。

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