固定資産税は減税できる?申請方法、優遇措置を解説

住宅や土地にかかる固定資産税。
これから家を買う人も、長年、家を所有し続けている人も、固定資産税を減税できるのであればその制度を賢く使いたいものです。
この記事では、固定資産税の減税に使える制度や、各制度の条件について紹介します。固定資産税を減らしたい人は必読です。
固定資産税とは
固定資産税とは、固定資産(家屋や土地など)にかかる税のことです。マンションや一戸建てを所有している場合、建物と土地それぞれに固定資産税がかかります。
課税基準日は1月1日なので、1月2日以降に固定資産を譲渡した場合も、1月1日の所有者に対して課税されます。しかし、多くの不動産取引では、所有権移転日を基準として、固定資産税額分の日割精算が行われることが一般的です。
固定資産税の納税先は各市町村(東京23区の場合は東京都)で、多くの市町村では毎年4月上旬頃に納税通知書を発送しています。納付時期は第1期から第4期までの年4回に分けられており、3か月に1回支払うことになります。(一括納付も可能です)
固定資産税の基本の計算
固定資産税の計算式を見てみましょう。税率は各自治体で定めることができますが、多くの自治体では次の数値を採用しています。
- 固定資産税評価額(課税標準)×1.4%
固定資産税評価額は建物と土地では別々に算定します。建物はその建物を再建築した場合にかかる金額から経年劣化分を減額したもの、土地は公示地価の7割程度が、評価額の目安になります。
固定資産税の標準税率は1.4%ですが、状況に応じて減税措置が設けられています。
住宅を取得、新築したときの固定資産税の減税
住宅は経済活性化に果たす役割が大きいことから様々な優遇措置が取られています。固定資産税もそのひとつで、特例が適用されるため実質上の減税となります。
住宅用地の課税標準の特例
住宅用の土地(住宅用地)は、課税標準の調整によって次のように減税されます。
区分 | 固定資産税 |
---|---|
小規模住宅用地(200平米以下の部分) | 課税標準×1/6 |
一般住宅用地(200平米超の部分) | 課税標準×1/3 |
たとえば土地面積が150平米で固定資産税評価額(課税標準)が1,800万円の場合だと1,800万円×1/6×1.4%で、土地の固定資産税は42,000円です。
建物については、次の新築住宅の条件に該当しない限り、減税となる特例はありません。
新築住宅の税額軽減の特例
新築住宅の税額軽減の特例は、建物の部分の税額が1/2に軽減される措置です(適用期限:2024年(令和6年)3月31日)。建物の構造によって軽減される年数が変わるため、新築マンションと新築一戸建てで違いが生じます。
区分 | 減額期間 |
---|---|
新築マンション | 5年間 |
新築一戸建て | 3年間 |
新築マンションの構造上の条件は3階建て以上の耐火・準耐火建築物で、それ以外のものは新築一戸建てと同条件になります。どちらも120平米までの部分が対象です。また、中古で購入した場合でも軽減措置に残り期間がある場合は、購入者がその措置を引き継いで受けることができます。
専有面積が90平米で固定資産税評価額(課税標準)が1,000万円の場合だと1,000万円×1.4%×1/2で、建物の固定資産税は70,000円です。
固定資産税は頭の痛いコストではありますが、家計の負担を減らしたいのなら、保険の見直しも効果的です。
特に持ち家にお住まいの方は、保険料を払いすぎている可能性があることをご存じですか?
住宅ローンを組む際、ほとんどが加入する団体信用生命保険(団信)と、それ以前から加入している生命保険とで、保障内容が重なっている場合があります。
知らず知らずのうちに、払う必要のない保険料を支払っている可能性があるため、家を購入したら早めに保険を見直しましょう。
住宅をリフォームしたときの固定資産税の減税
住宅をリフォームすることで、建物部分の固定資産税が軽減される措置もあります。
省エネ改修に関する特例
窓の改修や、それと併せて行う床の断熱改修、天井の断熱改修、壁の断熱改修を50万円以上かけて工事した場合が対象になります。
- 減税内容:翌年分の固定資産税額を1/3減額(120平米分まで)
- 適用期限:2023年(令和5年)12月31日
バリアフリー改修に関する特例
通路等の拡幅や階段の勾配の緩和、浴室・便所の改良を50万円以上かけて工事した場合が対象になります。
- 減税内容:翌年分の固定資産税額を1/3減額(100平米分まで)
- 適用期限:2023年(令和5年)12月31日
耐震改修に関する特例
現行の耐震基準に適合する耐震改修を50万円以上かけて工事した場合が対象になります。
- 減税内容:翌年分の固定資産税額を1/2減額(120平米分まで)
- 適用期限:2023年(令和5年)12月31日
長期優良住宅化リフォームに関する特例
一定の耐震改修または一定の省エネ改修および増改築によって長期優良認定を受けた工事を50万円以上かけて工事した場合が対象になります。
- 減税内容:翌年分の固定資産税額を2/3減額(120平米分まで)
- 適用期限:2023年(令和5年)12月31日
固定資産税の減額申請の方法は?いつまでに申請が必要?
固定資産税を減額するためには、申請が必要です。申請をスムーズに行うためにも、必要な書類や情報、いつまでに手続きが必要かなどをあらかじめ把握しておきましょう。
まず、申請には「住宅用地等申告書」もしくは「固定資産税減額申告書」が必要です。これらの書類は自治体のホームページからダウンロードできますので、お住いの市町村のホームページを確認してみてください。
固定資産税の減額申請には、次の5つの情報が必要となります。
- 納税者(不動産所有者)の氏名
- 家屋の所在地
- 家屋の種類(「居宅」など)
- 家屋の構造(「木造」など)
- 床面積
上記以外に、自治体によっては登記年月日や工事完了日の記入が必要な場合もあるので、各自治体の記載例は要チェックです。また、改修工事後の住宅性能を証明する書類を求められることもあるので、工事前に確認しておきましょう。
減額措置を受けるためには、新築の場合は工事が完了した年の翌年1月31日までに、リフォームの場合は工事終了から3か月以内に申請する必要があります。
申請期限を過ぎると軽減措置は適用されないので、忘れずに申請しましょう。
地目の転用で固定資産税は安くなる?
土地の固定資産税は、その土地の地目別に定められた評価方法により評価します。そのため同じ広さの土地でも地目によって評価額がまったく異なります。
評価額が低くなる地目に変更したら固定資産税が安くなるのでは、と考える人もいるようですが、これはあまり意味がありません。
土地の所有者ができる地目変更は登記地目と呼ばれる登記簿上の地目の変更です。しかし、固定資産税は課税地目をもとに評価します。課税地目とは市町村が現地調査を行ったうえで決定するものです。現況によって随時変更されていきますので、固定資産税を安くすることだけを目的に登記地目を変えても、なんら意味がないことになります。
これまで紹介してきたように、住宅用地に対しては固定資産税の軽減措置があります。そのため、更地だった場所に住宅を建設すれば、土地にかかる固定資産税は軽減されます。ただし、新たに建物にかかる固定資産税が発生する点には注意してください。(新築住宅も、「新築住宅の税額軽減の特例」によって新築後3年間は固定資産税が軽減されます)
固定資産税の減税は、申告・申請を忘れずに
住宅を新築したときは「固定資産税の住宅用地等申告書」の届け出が必要です。住宅用地の用途が変わった場合などもこの申告書を利用します。
また、リフォームによる固定資産税の軽減措置を受ける場合、「固定資産税減額申告書」を工事完了から3ヵ月以内に各市区町村に提出しなければなりません。このとき「増改築等工事証明書」や工事の内容を確認できる書類、写真などの提出も求められます。固定資産税の軽減措置を受けられるリフォーム工事を行う場合は、あらかじめ工事会社や建築士等と相談しておきましょう。
持ち家なら保険の見直しで節約できるかも
固定資産税のほかにも、家を購入した後に忘れずに確認しておきたいことが保険の見直しです。
持ち家にお住まいの方は、保険料を払いすぎている可能性があります。
住宅ローンを組む時に加入する団体信用生命保険(団信)と、それ以前から加入している生命保険とで、保険料の二重払いになっている可能性があります。すでに住宅ローンの返済が始まっている人は、できるだけ早く保険を見直すことで、無駄に支払う保険料を減らすことができます。

出版社で5年、Webメディアで10年の勤務後に独立。独立後最初の確定申告で大きくつまづき、以後、本業のかたわら独学で社会保険、不動産、金融等の知識習得に励む。2018年、ファイナンシャルプランナーに。得意ジャンルは不動産で、実生活では中古マンションの購入、リフォーム、賃貸、売却を経験。やさしい日本語でにっぽんの制度や仕組みを説明する「やさしい にっぽん」を企画・運営。ほか執筆記事にパートだから社会保険に加入したくない。【2022年の条件は?】など。