住宅ローン金利は今後どうなる?金利タイプごとの特徴、予測を大公開。おすすめは変動金利型?

住宅ローン選びでは、金利を固定するかそれとも変動するものにするか、どちらを選択するかが返済額を決める上での大きな分岐点となります。
それぞれの特徴や金利の決まり方、これまでの金利動向や直近の金利の動きを確認しましょう。どの金利タイプが自分に合っているか、答えが見えてくるかもしれません。
気になるエリアから最新の物件を検索できます
-
STEP1
-
STEP2
1. 住宅ローン金利:3つのタイプ解説
住宅ローン金利の現状や将来の見通しを考えるためには、住宅ローンの基本的な知識が必要です。その一歩目は、金利タイプによる違いがあることと、タイプごとの特徴を知ることです。
住宅ローン金利は固定、変動、選択型の3種類がある
住宅ローン金利には「固定金利型」「変動金利型」「固定金利期間選択型」 の3つの金利タイプがあります。
住宅金融支援機構の調査によれば、2021年10月から2022年3月までに住宅ローンの借入れをした1,500件において、利用した金利タイプの割合は「固定金利型」が8.9%、「変動金利型」が73.9%、「固定金利期間選択型」が17.3%でした。(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」)
利用が多いのは変動金利型ですが、だからと言って変動金利型が優れているとは断定できません。それぞれの違いを知り、自分にはどのタイプが合っているのかをしっかり検討することが大切です。
固定金利型の金利相場とメリット・デメリット
固定金利型は、全期間固定金利型とも言われるもので、借入期間中の金利が最初から最後まで変わらない点が特徴です。金融機関が独自に商品化するものもありますが、固定金利型の住宅ローンで真っ先に思いつくのは住宅金融支援機構の「フラット35」ではないでしょうか。
先に紹介した「住宅ローン利用者の実態調査」によれば、固定金利型の住宅ローンのうち、フラット35が占める割合は63.9%と高い数値になっています。2023年1月時点の固定金利型の金利相場は1.5~2%程度です。
固定金利型のメリットは、返済中の金利の変動がないので返済額が変わらず計画的に返済を行えることです。
デメリットは、他の金利タイプの住宅ローンと比べ金利が高く、総支払額が高くなることがあげられます。
変動金利型の金利相場とメリット・デメリット
変動金利型は、借入期間中の金利が変動する点が特徴です。借入金利が非常に低いこともあり、住宅ローンを借りる人の7割以上が、この変動金利型を選択すると言われています。2023年1月時点の変動金利型の金利相場は0.3~0.4%程度です。
変動金利型のメリットは、借入金利が低く、その金利が借入期間中ずっと続くようであれば他の金利タイプの住宅ローンと比べ総返済額を低く抑えられることです。
デメリットは、金利が変動したら返済額も変わるため返済計画が借入時に確定できないことです。金利が上昇したら返済額が増える点は、特に注意が必要です。
なお、元利均等返済で変動金利型の住宅ローンを返済していくときは、急激な金利上昇があっても「5年ルール」「125%ルール」というふたつのルールによって利用者が守られる仕組みがあります。「5年ルール」とは返済額の見直しは5年に1回とすること、「125%ルール」とは、返済額見直し時の変動幅は従前の返済額の125%までとするものです。
「5年ルール」「125%ルール」は当面の返済額への影響を防ぐには効果的です。しかし、金利が急上昇する局面では、返済額の大半を利息分が占め元本の減りが進まない、最悪のケースでは毎月返済額で利息分のすべてを返済できず、未払利息が発生してしまう可能性もあります。未払利息は免除されることはなく何らかの形で清算しなければなりません。
元金均等返済で返済する際は「5年ルール」「125%ルール」の適用はありません。また元利均等返済の変動金利型であってもこれらルールを適用しない商品もあります。「5年ルール」「125%ルール」がなければ未払利息のリスクはなくなりますが、返済額が際限なく上がることから、金利上昇リスクが高いことに変わりはありません。
固定金利期間選択型の金利相場とメリット・デメリット
固定金利期間選択型は、借入開始時からの一定期間を固定金利とし、終了後に変動金利型かふたたび固定金利期間選択型かを選ぶタイプの住宅ローンです。当初の金利固定の期間は2年、3年、5年、10年、15年、20年などがあります。
金利固定期間が短いと金利は低く、長いと高くなります。先の「住宅ローン利用者の実態調査」によれば、当初の金利固定期間を10年以上としている人の割合は45.9%と、およそ半数に迫ります。2023年1月時点の固定金利期間選択型の金利相場は10年固定のもので1.0~1.5%程度です。
固定金利期間選択型のメリットは、全期間の固定金利型よりは金利が低く、それでいて期間中は返済額が変わらないので、計画的な返済が行えることです。
デメリットは、固定金利期間終了後の返済計画が金利動向によって決まるため、金利上昇リスクがある点です。また、固定金利期間終了後に変動金利型を選択した場合、「5年ルール」「125%ルール」は適用されない点も懸念事項のひとつです。
2. 住宅ローン金利はどう決まるか?
住宅ローン金利を決めるのは各金融機関ですが、その際、ただやみくもにレートが設定されることはありません。金利タイプごとに指標となっているものを紹介します。
固定金利型・固定金利期間選択型の決まり方
固定金利型の金利は、長期金利に連動する傾向があります。長期金利とは、償還期間が1年以上のお金の貸し借りで適用される金利のことです。長期金利のなかでも固定金利との関係がもっとも深いとされているのが「10年物国債利回り」です。「10年物国債利回り」が上がると、固定金利も上昇する傾向にあります。10年国債の利回りは毎月金利の見直しが行われています。
固定金利期間選択型の金利は、各固定金利期間に応じた 「円金利スワップレート」が基準になると言われています。「円金利スワップ」とは、円金利同士(通常は固定金利と変動金利)を交換する取引のことです。「円金利スワップレート」は長期金利に連動する傾向があることから、長期金利の代表でもある「10年物国債利回り」が上がると、「円金利スワップレート」も上昇し、固定金利期間選択型の金利も引きあがる傾向にあります。
総じて、長期金利は市場予測や期待などが反映されて動くので、金融政策の影響を受けてダイレクトに動く短期金利よりも先に動き出すと言われています。これは固定金利型・固定金利期間選択型の金利のほうが、変動金利に先行して動き出すということを意味しています。
変動金利型の決まり方
変動金利型の金利は、短期金利に連動する傾向があります。短期金利とは、償還期間が1年未満のお金の貸し借りで適用される金利のことです。短期金利を代表するものが「短期プライムレート」です。変動金利型の金利決定には、「短期プライムレート」が深く関係すると言われています。
変動金利型は借入期間中は半年に一度の金利の見直しがありますので、借入中は常にその動向を確認しておく必要があります。
なお、変動金利と関連性の強い「短期プライムレート」は、かつての日本の政策金利で今も日銀の金融政策を反映する「無担保コール翌日物金利」によって決まります。流れとしては「日銀の金融政策」→「無担保コール翌日物金利」→「短期プライムレート」→「各金融機関の変動金利」です。
2009年以降、短期プライムレートは1.475%のまま変わらず推移しています。各金融機関は短期プライムレートに1%を上乗せした2.475%を変動金利として定めています。実際に利用者が変動金利型で借入をする際の金利(適用金利)は、この2.475%(基準金利または店頭金利と言います)から金融機関が個別に設定する優遇金利を差し引いたものになります。
2009年以降も変動金利が引き下がっているように見えるのは、各金融機関の顧客獲得競争により、優遇金利が大きくなり適用金利が低くなっているからです。
3. 住宅ローン金利の推移と今後どうなるか
住宅ローンの金利の推移をどのように予測するかは、様々な議論のあるところです。直近の動き、今後の見通しを考えてみましょう。
住宅ローン金利の直近の推移
2022年12月の日銀の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅の上限が0.25%から0.5%に拡大しました。この流れを受けて、2023年1月、固定金利型のフラット35の金利は前月比+0.03%(返済期間21年~35年の最頻金利)、10年固定の固定金利期間選択型の金利は大手5行の平均が前月比+0.24%の引き上げとなりました。
一方で変動型金利の金利は引き続き2.475%に据え置かれたままです。
住宅ローン金利は今後上がるのか
住宅ローン金利の将来を言い当てることは誰にもできませんが、状況を観察することは重要です。
固定金利型、固定金利期間選択型の金利は、長期金利の変動幅が拡大したことがそのまま、金利アップにつながった様相です。金利アップが一時期のものなのか、継続性を伴うものなのか引き続き注視が必要でしょう。
変動金利は、指標となる短期プライムレートが2009年から1.475%を記録し続けていること、日銀の金融緩和政策が昨今の物価上昇はエネルギー価格や輸入した原材料費の高騰などにを考慮しマイナス金利を継続することなどから、すぐに基準金利に影響を及ぼすことは考えづらいです。
適用金利についても、変動金利型の住宅ローンが各金融期間の顧客獲得の中心サービスとなっているため、簡単には上がらないと思われます。
4. 住宅ローン金利で固定か変動か決める基準
住宅ローン金利を固定金利型、固定金利期間選択型、変動金利型のいずれのタイプにするかは借り入れをする人の属性や返済プラン、資金の有無などを判断基準とすることができます。
固定金利型、長期の固定金利選択型が向いている人
固定金利型、長期の固定金利選択型の特徴は、返済プランが安定することです。この特徴をうまく利用できるのは次のような人です。
・公務員など収入が安定している人
・住宅ローン返済途中で繰り上げ返済や借り換えなどを考えたくない人
・最初に返済総額を確定させて、住宅ローン金利変動に悩まされたくない人
・家計に余裕がなく急な金利変動への対応が難しい人
資金に余裕がない人ほど当初の返済額が少ない変動金利に目を奪われがちですが、変動金利型の利用は急な金利上昇への備えがあってこそです。家計に占める住宅ローン返済の負担が高い人ほど、固定金利型、長期の固定金利選択型が向いています。
変動金利型が向いている人
変動金利型の特徴は、金利が低く当面の返済額が少なくて済むことです。この特徴をうまく利用できるのは次のような人です。
・借入金額が大きくない人
・繰り上げ返済を利用して、早めに完済したい人
・将来的な利上げにも手持ち資金や借り換えなどで対応できる人
いずれも急な金利上昇への備えという意味で、共通する適性です。
どちらかといえば変動金利型がオススメの理由
住宅ローン金利はタイプごとの特性や借入者の適性で考慮することが大前提ですが、現時点で相対的な評価をするのであれば、変動金利型に優位性があるかもしれません。
住宅ローンの総返済額を抑えるためには、元本をいかに早く減らすかが重要になります。金利が低いほど同じ借入額、同じ返済期間でも毎月の返済額に占める元本分の割合が高くなります。
つまり、変動金利型は固定金利型、長期の固定金利選択型よりも元本をより早く減らすことができるということです。金利が低ければ毎月返済額が少なくなっているので、その分を繰上返済へ回す準備もできます。繰上返済はすべて元本が対象になりますので、元本を早く減らすという目的に適った対策です。
また、覚えておきたいのが、住宅ローンを元利均等で返済する場合、発生する利息は返済の初期に集中する、ということです。例えば、4,000万円を金利0.5%、元利均等返済、返済期間35年で借り入れたときの、利息総額約361万円のうちおよそ半分にあたる173.6万円は最初の10年間で支払うことになります。
つまり返済総額を抑えるためには、返済期間の初期ほど低い金利を適用することが重要になるのです。
変動金利型をおすすめする理由には、短期プライムレートが2009年から変動していない点もあげられます。長期間、短期プライムレートが安定していることは、変動金利型の利用者増にもつながっています。そうした中で日銀主導で短期プライムレートを大幅に上げることは、市場への大きな混乱をもたらすであろうことから、仮に金利を上げるにしてもそれは段階的なものになるのではないかと予測されるからです。
繰り返しますが将来の金利を正確に予測することは誰にもできません。しかし金利タイプごとの金利の決まり方やこれまでの金利動向、現在の経済動向や社会情勢を考慮することで、自分にとって最適な金利タイプは見えてくるかもしれません。
気になるエリアから最新の物件を検索できます
-
STEP1
-
STEP2

マイホーム購入のダンドリ、不動産売却にかかる費用、賃貸物件の探し方など、住まいの基礎知識から契約、税金といった専門的な内容までわかりやすく解説。宅地建物取引士や司法書士、税理士、FPなどの不動産・お金の専門家が、監修・執筆した記事を配信しています。
コンテンツポリシー