立ち退き料の相場はいくら?スムーズな明け渡しに不可欠な立ち退き料について解説

賃貸に出しているアパートや一戸建てから借主に出て行ってもらうことは、簡単ではありません。十分な期間を取って通知することや、出て行ってもらうための正当な理由を伝えることが不可欠です。
そのうえで、必要となるのが立ち退き料の支払いです。立ち退き料の相場はどれくらいになるのか、住宅や店舗で違いがあるのかなど、立ち退き料について確認しましょう。
立ち退き要求は対応を間違えると、立ち退きを要求される借主が強硬な姿勢となり、いつまでも明け渡しに応じないというリスクも予想されます。感情的になりすぎず、丁寧に進めていくことが大切です。
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1. 立ち退き料の相場はどのくらい?
立ち退き料の相場はおおよそ家賃の6ヶ月~10ヵ月分程度と言われています。ただし、借主の建物の利用目的や、立ち退きを求める理由などによって金額は大きく変わります。
立ち退きを求める理由に正当性があるなら金額は低くなり、貸主の自己都合であれば高くなる傾向があります。
戸建てやマンションなど住宅の立ち退き料
戸建てやマンションなど居住用の建物の立ち退き料は、次のような項目に留意して金額を決めることになります。
・引っ越し代
・新居の初期費用相当額
・迷惑料
引っ越し代と新居の初期費用相当額は比較的見積もりはしやすいのですが、迷惑料は基準がないため算出の仕方はケースバイケースです。後ほど説明する「借家権の補償」などが迷惑料に含まれます。
事務所の立ち退き料
事務所の立ち退き料は、次のような項目に留意して金額を決めることになります。
・引っ越し代
・新居の初期費用相当額
・迷惑料
迷惑料には、たとえば事務所の住所変更に伴う登記変更手続きなど公的な費用負担もさることながら、名刺の刷り直しなども含まれます。立ち退き料の相場とした家賃10ヵ月分を超過し1年~2年分程度の支払いが必要になるケースも考えられます。
店舗や飲食店の立ち退き料
店舗や飲食店の立ち退き料は、次のような項目に留意して金額を決めることになります。
・引っ越し代
・新居の初期費用相当額
・休業補償
・迷惑料
店舗や飲食店は事務所と違い、ほぼ確実に休業期間が必要になります。それら休業補償を加えると、立ち退き料の相場とした家賃10ヵ月分を優に超過し1年~3年分程度、あるいはそれ以上の支払いが必要になるケースも考えられます。
現実的に支払いが可能かどうか、可能でなければどのような方策があるのか。弁護士を交えての協議なども必要かもしれません。
2. 立ち退き料とは?
立ち退き料とは、貸主が借主に立ち退きを求めるときに払うお金のことですが、法律的にはどのような位置付けにあるものなのでしょうか。
立ち退き料の判例と法的根拠
立ち退き料を巡る裁判事例は枚挙にいとまがありません。裁判では明け渡し要求に正当事由を認めないものも多く、その場合、立ち退き料そのものが発生しない事態となります。
一方、正当事由が認められるケースでは貸主が提示した立ち退き料がそのまま認められることもあれば、裁判所が別に金額を提示することもあります。
いずれにせよ、立ち退き料は貸主が正当事由によって賃貸契約の解約を申し出る際にはその理由を補完する一部として不可欠なものであることが、これまでの判例で認めている点です。
過去の正当事由
貸主側に正当事由があり、借主が退去しなければならないとした判例では、主に次のような事情が正当事由として認められています。
・耐震性に問題がある建物を解体するために明け渡しを求めるもの。
・貸主が老朽化した自宅の補修改築のために、当該建物を空き家状態で売却する必要があるもの。
・貸主が借入金の返済や未払債務などに充当するため、当該物件を売却する必要性があるもの。
もちろん、耐震性に問題があれば必ず正当事由となり借主を退去させられる、とは限りません。貸主側の主張のみならず、契約の相手方(借主)の事情や、該当物件がどのようなものなのかで判断が変わることは当然にあり得ます。
あくまで判例として、このようなものがあったと留めるものとしてください。
賃借人が契約違反した場合は立ち退き料不要
立ち退き料を払わずに賃貸人(貸主)から賃貸借契約を終わらせられるケースがあります。たとえば賃借人(借主)が契約違反をしたときなどです。そのほか、次のケースも立ち退き料不要ですので、覚えておきましょう。
定期建物賃貸借契約
定期借家権とも呼ばれる契約です。定期建物賃貸借契約は、契約期間が満了したら更新をしないことを認められている契約です。当然、契約満了時に貸主に正当事由の有無があるかは問われません。
取壊し建物の賃貸借契約
法令や契約によって一定期間経過後に建物を取り壊すことが明らかな場合、建物取り壊し時に賃貸借が終了する特約を定めることができます。
3. 【事例別】立ち退き料の考え方
借主へ立ち退きを求めるにあたっての理由や、その場合の立ち退き料について事例別に考えてみます。
老朽化
立ち退きを求める理由として多くあるのが建物の老朽化です。地震発生で建物が倒壊するようなことがあれば借主にも甚大な被害が生じます。そのため正当事由になりやすそうな印象がありますが、必ずしも老朽化だけで正当事由が認められるとは限りません。
老朽化対策の実現性や対策を実施した場合の貸主の費用負担の程度、さらには立ち退き後にその地をどのように利用するのかなどをもって、貸主の正当事由となるかが検討されます。
実際の裁判では、これら貸主側の事由だけで正当事由にならないことが指摘され、十分な立ち退き料を支払うことでようやく正当事由が補完される、と示したケースもありました。この事例では借主がその建物に住む必要性やそれによって得られる利益などが考慮され、相応な立ち退き料を支払うこととなりました。
計画道路
計画道路の事業決定がなされ、所有するアパート等の取り壊しを役所から求められることがあります。この場合、貸主は借主に対して事情を伝える役割を担うことがほとんどですが、立ち退き料を払う立場にはありません。
借主への補償は、役所が直接行います。その交渉を貸主が行う必要もありません(ただし、借主が立ち退かない限り、そのアパートを取り壊せず、貸主の立ち退きも完了しないので何らかの形でかかわる可能性があります)。
区画整理
区画整理事業によって、所有するアパート等の取り壊しを役所から求められることがあったときの考え方は、先の計画道路と同様です。貸主は役所から補償を受ける立場であり、その点では借主と同じです。
4. 立ち退き料の計算方法
立ち退き料を決めるにあたっては、なぜその金額になるのか、何らかの根拠を提示することになるでしょう。立ち退き料の内訳や計算方法について考えてみましょう。
立ち退き料の内訳
立ち退き料の内訳では、まず立ち退きによって借主が現実的に負担する「引っ越し代」「新居の初期費用相当額」があります。これらは実際の数値をもとに算出できるので比較的わかりやすいものです。
問題は「迷惑料」に該当するものをどのように算出するかです。「迷惑料」という抽象的なものであっても、数値にする以上、何かしらの根拠を用いることになります。
立ち退きによって借主は借家権を失うことになるので、その補償(借家権の補償)という考え方から、立ち退き料を算定するなどはその最たる例かもしれません。
戸建てや賃貸マンションなど住宅の立ち退き料の計算方法
戸建てや賃貸マンション、アパートなど住宅の立ち退きで迷惑料の算定基準として「借家権の補償」を利用する場合、その求め方にはいくつか方法があります。
収益還元方式
借主が転居した後の賃料が、今の賃料より上がった際の差額を基準とする考え方です。
・借家権=(移転先の実際支払い賃料―現在の実際支払い賃料)×複利年金現価率
割合方式
相続税などを計算する際の財産の評価方法を利用した求め方です。
・借家権=(底地価格×借地権割合×借家権割合)+(建物価格×借家権割合)
収益価格控除方式
該当の不動産を貸しているときの価格が、貸主が自分で利用したときの価格より落ちている場合に、その差額を基準とする考え方です。
・借家権=自用の不動産価格-借家の不動産価格
店舗・テナントの立ち退き料の計算方法
借主が店舗やテナントであれば、「迷惑料」は立ち退きによって借主が負担せざるを得ないであろう費用の補償をもとに考える方法が一般的です。いくつか例をあげてみましょう。
工作物補償
新居を店舗として利用するために必要となる内装工事などの費用補償。
動産移転補償
商品や棚、家具や家電など店舗で利用するものを、新居へ移すための費用補償。
移転雑費補償
店舗の移転に伴い発生する雑費用の補償。
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