厚生年金「パートへの適用拡大」でどうなる?お金のプロが超簡単に説明

厚生年金「パートへの適用拡大」でどうなる?お金のプロが超簡単に説明

こんにちは、ファイナンシャルプランナーの鈴木です。

2019年9月は年金に関するニュースがメディアを賑わせました。
1つは「老後2000万円問題」。老後は年金と別に2000万円の準備が必要、とした金融庁の報告書が取り消されたニュースです。

そしてもう1つのニュースが「パート労働者への厚生年金の適用拡大」に向けて厚生労働省の方針が示されたことです。

厚生年金の適用拡大とはどんなニュース?

「パート労働者への厚生年金の適用拡大」とは何でしょうか。

簡単に言うと、もっと多くのパートが厚生年金に入れるように条件を変えようというニュースです。

このニュースは立場によって受け取り方が変わります。

社会全体としてみたら年金制度の維持・持続の点で加入者(年金負担をしてくれる人)が増えることはよいことです。

パートで働く人は2つの立場に分かれます。厚生年金に入りたいけど入れなかった人からすれば適用拡大はよいニュースです。将来の年金を多く受け取るには国民年金だけではなく厚生年金への加入が不可欠だからです。

一方で入りたくないのは配偶者の保険組合に被扶養者として認定されている人です。パート先で厚生年金に入らなければいけなくなると、働いた給料の一部(約9.15%)が保険料として天引きされてしまい手取り額が減ってしまうからです。

このようにパートという働き方は同じでも「パートへの厚生年金の適用拡大」の捉え方は大きく変わります。

また、このニュースに一番敏感なのは厚生年金に加入していないパートを多数抱える会社です。厚生年金は労使折半です。厚生年金への加入を義務づけられるパートが増えるとその人数分だけ会社も厚生年金を負担することになります。何百人、何千人という規模でパートを雇っている会社からすれば経営に影響を及ぼすレベルの大きな問題です。

現在の厚生年金への加入条件と今後の変更点

このように立場によって「パートへの厚生年金の適用拡大」ニュースの受け止め方は様々ですが、そもそも今のパートの厚生年金への加入条件はどうなっているのでしょうか。それをどのように変えようとしているのか、確認してみましょう。

まず、社員とほとんど変わらない働き方をしているパートであれば、会社はそのパートを社会保険に加入させなければなりません。例として「会社での1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上ある」パートが挙げられます。

もう少し緩やかな条件もあります。今回の適用拡大のボーダーラインとされているのはこの緩やかな条件のほうです。具体的にみてみましょう。

以下は従業員数が501人以上の会社で働く場合に厚生年金への加入が義務付けられるパートです。条件はすべて同時に満たす必要があります。

  • 週所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金8.8万円以上
  • 1年以上の使用見込みがある
  • 学生等でない

「従業員数が501人以上の会社で働く場合」という条件がとても重要です。もし従業員数が500人以下の会社で働く場合は週所定労働時間が20時間以上から30時間以上に引き上げられます(それ以外は同じですべてを同時に満たす必要があります)。

500人以下の会社で働くパートのほうが厚生年金に加入するのが難しいことがわかりますね。

適用拡大で厚生年金が義務になるのはどんなパート?

今回の「パートへの厚生年金の適用拡大」は500人以下の会社で働くパートがターゲットです。加入条件の境界線となっている「従業員数500人」の数値を引き下げる(より少なくする)ことで適用となるパートを増やそうとしているのです。これは、中小企業で働いているパートに厚生年金へ加入を拡げることを意味します。

先に触れたように厚生年金の適用拡大は会社に与える影響が非常に大きいものです。そもそも「従業員数500人」というボーダーラインは中小企業に配慮して設定されたものでした。しかし加入者であるパート、とくに厚生年金に加入したい人からすれば勤め先従業員数の違いで厚生年金に入れるかどうかが決まるのは不平等と感じるでしょう。

具体的な数字はまだ明かされていませんが、2019年9月、厚生労働省の有識者会議では厚生年金のパートへの適用拡大に向け、加入要件にある従業員数を「501人以上」から引き下げるべきだとの報告書をすでにまとめています 。

厚生年金に入りたくない人からすればこれは大きな問題です。従業員数500人以下の会社で厚生年金への加入を避けるため、週所定労働時間30時間未満の範囲でパートをしている人は今回の適用拡大で厚生年金への加入が義務となる可能性が生じます。

パートにも働き方改革?厚生年金に入るメリットとは

厚生年金に入りたくないパートが、厚生年金の加入要件の従業員数の引き下げによって適用範囲内となったらどうすべきでしょうか。週所定労働時間を20時間未満にすれば適用から外れることはできますが、その分手取りは減ってしまいます。

厚生年金のメリットは老後に受け取れる年金が増えることです。しかもその原資ともいえる保険金の半分は会社が負担してくれます。手取りが減るデメリットを将来取り戻せる可能性は十分にあるのです。

また、不幸にも病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合、「障害厚生年金」が給付されるという点もいざというときに助けになるかもしれません。

厚生年金保険のメリットデメリット双方を考えて、パートとしての働き方を見直す機会としてもいいかもしれません。

鈴木玲
FP・住宅ローンアドバイザー

こんにちは。2級ファイナンシャルプランナーの鈴木です。

住宅関連の雑誌編集者を4年間、Webディレクターを10年間経験したのち、個人事業主として独立。独立によって様々な金融問題に直面し、ファイナンシャルプランナーの資格を取得しました。

税金や保険、資産運用など誰にも関係するけど、まとまった勉強の時間が取れない人に、要点をまとめて、わかりやすく情報を提供していくことを心掛けて活動しています。

社会保険の独学勉強法ほか